検索窓
今日:442 hit、昨日:296 hit、合計:2,503,015 hit

5、茶漬けが食べたい ページ5

××



My mother has killed me(お母さんが私を殺して

My father is eating me(お父さんが私を食べている

My brothers and sisters sit under the table(兄弟たちは私の骨を拾い

Picking up bury them under the cold marble stones(冷たい大理石の下に埋めたの



彼女が華やいだ声で歌う。
その唇から零れるのは異国の言葉。
街行く人々は皆、その歌詞の意味も理解しないまま七竈Aという少女に釘付けになる。高く澄んだソプラノの声に残酷なまでに美しいそのかんばせに。

歌い終わると大人達が彼女の足元にお金を置いていく。Aちゃんがそれをすべて拾い上げ、一礼すると少し後ろでその様子を眺めていた僕の元へ走ってきた。


「これで何食べますか、中島先輩」

「お茶漬け」

「云うと思っていました」


あの日以降、僕とAちゃんはこうして共に旅をしていた。Aちゃんが歌を歌ってお金を貰い、それで食物を買う。女の子の世話になるなんて情けないと思いつつも、僕も一応……野宿するときに誰にも襲われないよう一睡もしないでAちゃんを守ったり、少しは役に立っているつもりでいる。……本当に些細なことだけれども。


「Aちゃんと出逢えて良かった」

「何を改まって仰っているのですか、中島先輩」

「いや……だってさ、Aちゃんがいなければ今頃飢え死にしてたかもしれないし」


可笑しなことを、とAちゃんはクスリと笑った。その笑みを見る度に、頬に熱が集まっていくのを感じる。悟られまいと「さっきの歌、なんて歌?」と話題を変えた。


「マザーグースですよ。さぁ、早く行きましょう」


手を引かれ、真っ直ぐと歩き出す。
彼女と見る夕日は一人で見るよりも、ずっと、美しく感じた。鶴見川の辺りを歩いていると、唐突にAちゃんの足が止まった。


「……あれは、」


Aちゃんの視線の先を辿ると、川に人の足が浮かんでいるのが見えた。Aちゃんと僕は顔を見合わせる。


「良いですか、先輩。私たちは何も見なかった。良いですね?」

「……うん」


僕らはまた無言になり、何事もなかったように歩く。でも、矢張りあの浮いてる足が忘れられない。というかあんなものを見てすぐに忘れられる人なんているのだろうか?


「や、矢っ張り……行って来るよ」


Aちゃんから手を離し、僕は全速力で川に飛び込んだ。



**

6、彼ノ名ハ、太宰治→←4、旅は道連れ、世は情け



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (1544 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
3767人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

黒灰白有無%(プロフ) - 試しにと思い読んでみたら迚も面白かったです!!賭ケ/グ/ル/イは少々爆笑 Aが割と多く出て来るのは珍しいですね。凄く良い話だったので其の儘続編も楽しませて頂きます!! (9月8日 3時) (レス) id: 1ab55170b6 (このIDを非表示/違反報告)
そよそよ - A''''わずか一話で死んだのにいいキャラだった (2023年4月14日 18時) (レス) id: 28bb2962c4 (このIDを非表示/違反報告)
モモンガ←? - すっごくこの作品大好きで何回も読んでます!!七竈ちゃん可愛くて大好きです!!!!!! (2022年8月25日 13時) (レス) id: e4f6a8b567 (このIDを非表示/違反報告)
ミカン - Aはいいキャラしてるんだよなぁ (2022年1月4日 8時) (レス) @page50 id: 168fc3a64e (このIDを非表示/違反報告)
neko - 太宰さん…。 (2020年5月11日 15時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:あんず | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2019年6月14日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。