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37、主人と異能の静かな対峙 ページ37

××



「エリスちゃん。今日は出てくるなと、」

「でも、この子の声がしたの。
助けてって声がしたの。この子が、私に助けを求めた。この子が求めたことなら、私はなんだってするわ。リンタロウ」


リンタロウ、と呼ばれた男性の顔は更に歪む。


「私を殺せばエリスちゃん、君も死ぬのだよ?
今日逢った子の為に、君は死ぬというのかい」

「それでも、構わない」


エリスという少女は射抜くように男性の顔を見つめる。どうして。どうして、初めて会った名も知らぬ私の為にそこまで出来るのだろう。なんて、そんなの答えは一つしかない。私の異能が`魅了´だから。


嗚呼、本当にどうして。


涙がカーペットに零れ落ちた瞬間、少女が振り返った。


「泣かないで。ねぇ、あなたの望みは何?あなたが望むなら、リンタロウを殺しても、」

「良いのです、良いのです」


私は私を守ろうとしてくれた少女の髪を撫でる。
私が命じれば少女は絶対に目の前の男性を殺すだろう。けれど、それは私の望みではない。


「……君の能力を少々侮り過ぎたようだ」


あぁ、これはまたセッテイし直すしかないかなぁ。いやでもどうせまた魅了されちゃうんなら無駄かなぁ、と意味不明な言葉を呟く。


「リンタロウ、この子を解放してあげて」

「……分かったよ、エリスちゃん。
私もエリスちゃんに攻撃されたくないからねぇ」


男性はワザとらしく肩を竦める。
失礼します、と一つの声が扉を開いた。

入って来たのは片目を前髪で隠した高身長の男性だった。拘束されている私を見ても顔色一つ変えないところから見て、当たり前だがマフィアの人間なのだろう。


「あぁ、A(エース)くん。丁度良かった、この子を送ってあげて」

「……はい?」

「本当は芥川くんにでも頼もうと思ったのだけど生憎、彼は人虎の方に回っているからねぇ。中也くんも遠征帰りだし、囚われの太宰くんに夢中だから。Aくん、頼んだよ」


A、と呼ばれた男性は冷めた眼差しで男性を見つめる。しかし、すぐに笑顔に戻り「承知しました」と恭しく頭を下げた。

そしてAさんはゆっくりと此方に近づくと私の足を制圧していた足枷を外した。Aさんに連れられ、部屋を出ようとした時、エリス少女の名残惜しそうな視線に気づく。そうだ、私を助けてくれたのだし、せめて名前だけでも。


「私の名は、七竈Aで御座います!」


エリス少女の頬に満面の笑みが咲き誇る。
その無垢な清々しい微笑みを見て、少し、胸が痛くなった。



**

38、賭博師は耳許で囁く→←36、救世主というにはあまりにも



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黒灰白有無%(プロフ) - 試しにと思い読んでみたら迚も面白かったです!!賭ケ/グ/ル/イは少々爆笑 Aが割と多く出て来るのは珍しいですね。凄く良い話だったので其の儘続編も楽しませて頂きます!! (9月8日 3時) (レス) id: 1ab55170b6 (このIDを非表示/違反報告)
そよそよ - A''''わずか一話で死んだのにいいキャラだった (2023年4月14日 18時) (レス) id: 28bb2962c4 (このIDを非表示/違反報告)
モモンガ←? - すっごくこの作品大好きで何回も読んでます!!七竈ちゃん可愛くて大好きです!!!!!! (2022年8月25日 13時) (レス) id: e4f6a8b567 (このIDを非表示/違反報告)
ミカン - Aはいいキャラしてるんだよなぁ (2022年1月4日 8時) (レス) @page50 id: 168fc3a64e (このIDを非表示/違反報告)
neko - 太宰さん…。 (2020年5月11日 15時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あんず | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2019年6月14日 21時

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