30、あなたに不利な証拠として ページ30
××
「犯人は君だ」
江戸川先輩が指差した先には、杉本巡査がいた。
「おいおい、貴様の力とは笑いを取る能力か?
杉本巡査は警官で俺の部下だぞ!」
「杉本巡査が、彼女を、殺した」
「莫迦を云え!有り得ない!」
箕浦刑事は小莫迦にしたように笑うが、その額には僅かに汗が浮かんでいる。有り得ないと呟く箕浦刑事の声は自分に云い聞かせているようだった。
「君、拳銃貸して」
「ば、莫迦云わないで下さい!
一般人に官給の拳銃を渡したりしたら減棒じゃ済みませんよ!」
杉本巡査の異常な汗の量に、その狼狽ぶりが何よりも彼が犯人であることを語っていた。箕浦刑事はまだその事に気づいていないようで銃を渡してやれ、と杉本巡査に命じる。杉本巡査は硬直していた。
「いくらこの街でも素人が銃弾を補充するのは容易じゃない。官給品であれば尚更」
「……っ」
「何を……何を黙っているんだ!杉本……!」
箕浦刑事は悲痛に呼び掛ける。
杉本巡査は何も、答えなかった。
ただ空を仰ぎ、虚ろな瞳で腰元の拳銃に手をかける。明らかに、様子が可笑しい。太宰先輩がまずい、と呟く。
「よし行け敦くん!!」
中島先輩が太宰先輩に背中を押され、半ば転がるようにして杉本巡査に飛びかかった。引き金を引こうとした巡査の手を捻り上げ、その動きを封じる。中島先輩の大活躍により、銃弾は誰にも貫通することはなかった。それは目出度い。しかし!
「もし中島先輩が怪我でもしてしまったらどうするのですか!」
「えー」
えーじゃなくて!
中島先輩の反射神経が抜群だったから良かったものの、何があっても可笑しくはなかった。
「放せ僕は関係ない!」
「逃げても無駄だよ。犯行時刻は昨日の早朝。
場所はここから百四十
杉本巡査と被害者の足跡が。
そして、消しきれなかった血痕も。
「どうして……バレるはずないのに……」
唇を噛み締める杉本巡査の肩に、箕浦刑事の手が置かれる。苦渋と哀しみに満ちた上司の表情を見て巡査は抵抗をやめ、項垂れた。
「続きは職場で聞こう。
……お前にとっては元職場になるかも知れんが」
***
被害者は政治家の汚職事件を追っていた。
そこである大物議員の犯罪を示す証拠品を入手した。しかし、議員は警察内のスパイを使って証拠をもみ消そうとした。
そのスパイこそ、杉本巡査だった。
**
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黒灰白有無%(プロフ) - 試しにと思い読んでみたら迚も面白かったです!!賭ケ/グ/ル/イは少々爆笑 Aが割と多く出て来るのは珍しいですね。凄く良い話だったので其の儘続編も楽しませて頂きます!! (9月8日 3時) (レス) id: 1ab55170b6 (このIDを非表示/違反報告)
そよそよ - A''''わずか一話で死んだのにいいキャラだった (2023年4月14日 18時) (レス) id: 28bb2962c4 (このIDを非表示/違反報告)
モモンガ←? - すっごくこの作品大好きで何回も読んでます!!七竈ちゃん可愛くて大好きです!!!!!! (2022年8月25日 13時) (レス) id: e4f6a8b567 (このIDを非表示/違反報告)
ミカン - Aはいいキャラしてるんだよなぁ (2022年1月4日 8時) (レス) @page50 id: 168fc3a64e (このIDを非表示/違反報告)
neko - 太宰さん…。 (2020年5月11日 15時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
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