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28、入水男が引き上げられた ページ28

××



暫く練り飴を練り続けていると刑事さん達の慌ただしい足音が聞こえた。顔を上げてみる。そこには落ち葉やら缶やらを身に纏った太宰先輩が逆さまの状態で網に吊り下げられていた。

失礼ながら、内心ドン引きした。

中島先輩も私と同じ気持ちなようで道端の嘔吐物を見るかの如き眼差しを太宰先輩に向けている。


「前回の美人さんの件で私は実感した!
矢っ張り死ぬなら心中に限る!独りこの世を去る淋しさの何と虚しいことだろう!というわけで一緒に心中してくれる美女募集。おや、彼処にいるのはAちゃんじゃあないか」


丁度良かった、今から一緒に心中しない?と恥ずかしげもなく大きな声で誘ってくる太宰先輩を無視して、私は再び練り飴に視線を戻す。大分練り込めた。江戸川先輩に渡そうと小走りで彼の元へ寄った。


「お、もう練れたの?ありがとう、君も中々使えるね〜!」

「おい、此処は事件現場だぞ。そんなものを食うな」


不謹慎だと云いたげに箕浦刑事は江戸川先輩を睨みつける。刑事だけあって彼の眼光は鋭かった。しかし、江戸川先輩はそれに臆することなく平然と練り飴を口に入れる。んー、美味しい、と江戸川先輩は私の髪に手を置いた。


「おい、だから食べるなと」

「なんという悲劇!悲嘆で胸が破れそうだよ!
どうせなら私と心中してくれればよかったのに!」


太宰先輩は相変わらず芝居がかった大袈裟な仕草で胸に手を当て悲しがる。どうやら中島先輩から一連の流れを聞いたようだ。


「しかし安心し給え、ご麗人!
稀代の名探偵が必ずや君の無念を晴らすだろう!ねえ、乱歩さん?」

「ところが僕は未だ依頼を受けていないのだ。
名探偵いないねえ、困ったねえ」


江戸川先輩はワザとらしく周囲を見回すと、ポカンとしている若い刑事さんに狙いを定めた。今思えば、この時から江戸川先輩は凡て見抜いていたのかもしれない。


「君、名前は?」

「え?あ、じ、自分は杉本巡査です!
殺された山際女史の後輩であります」


杉本巡査が名乗ると江戸川先輩はにぃっと悪戯を企む子供のように口の端を吊り上げた。


「よし、杉本巡査!今から君が名探偵だ!六十秒でこの事件を解決しなさい!」

「へっ、あ、いくら何でも六十秒は、」

「はいあと五十秒」


杉本巡査が慌てている間にも時間は無情に過ぎていく。中島先輩は心の底からの同情を込めた目で杉本巡査を見つめていた。


**

29、江戸川乱歩の為の舞台→←27、名探偵様のお通り



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黒灰白有無%(プロフ) - 試しにと思い読んでみたら迚も面白かったです!!賭ケ/グ/ル/イは少々爆笑 Aが割と多く出て来るのは珍しいですね。凄く良い話だったので其の儘続編も楽しませて頂きます!! (9月8日 3時) (レス) id: 1ab55170b6 (このIDを非表示/違反報告)
そよそよ - A''''わずか一話で死んだのにいいキャラだった (2023年4月14日 18時) (レス) id: 28bb2962c4 (このIDを非表示/違反報告)
モモンガ←? - すっごくこの作品大好きで何回も読んでます!!七竈ちゃん可愛くて大好きです!!!!!! (2022年8月25日 13時) (レス) id: e4f6a8b567 (このIDを非表示/違反報告)
ミカン - Aはいいキャラしてるんだよなぁ (2022年1月4日 8時) (レス) @page50 id: 168fc3a64e (このIDを非表示/違反報告)
neko - 太宰さん…。 (2020年5月11日 15時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あんず | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2019年6月14日 21時

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