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27、名探偵様のお通り ページ27

××



最初は何かの冗談と思っていたが、江戸川先輩は本当に列車の乗り方が判っていなかった。ただ世界一の名探偵だと自負し、他の社員からも敬われているようだし彼が `名探偵´ であるのは間違いないだろう、恐らく、多分。


「遅いぞ、探偵社!」


現場に到着するとベテランの風格を醸し出す刑事さんが仁王立ちして立っていた。この刑事さんとは初対面なのか「ん、きみ誰?」と江戸川先輩は首を傾げる。


「俺は箕浦(みのうら)。安井の後任だ。本件はうちの課が仕切る。貴様ら探偵社は不要だ」

「ははは!莫迦だなあ!この世の難事件は須らく名探偵の仕切りに決まっているだろう?」


歳上の大人に対する言葉とは思えないほど砕けた口調に私と中島先輩はぎょっと顔を見合わせる。矢張り、探偵社の人間は皆どこか変わっている。まぁもっとも、実の母親に「あんたは風変わりな女ねえ。誰に似たのかしら」と笑われた私が云えることではないだろうが。でも、きっと、人間はみぃんな何処か変わっているのですよ。


「兎に角俺は抹香臭い探偵社など頼らない!絶対にだ!」

「なんで」

「───殺されたのが、俺の部下だからだ」


箕浦刑事の後ろに控えていた若い刑事さんがブルーシートを外す。女性の遺体。栗色の髪は濡れ、衣服には泥がついている。その遺体を見て、お巡りさんが芥川の異能に切り裂かれた凄惨な光景がフラッシュバックした。


「……う……」

「Aちゃん、大丈夫?」


ふらつく私を中島先輩が支えてくれる。
ありがとう、とお礼を云うだけの元気もなくて私はただ吐き気を我慢した。


「君、ちょっと来て」


ご遺体に手を合わせていた江戸川先輩はゆっくりと立ち上がる。そしと中島先輩に寄り掛かっていた私の目の前に、練り飴の入った包みを差し出した。


「君は向こうでこれ練ってて!」

「……で、ですが」

「良いから!名探偵の命令!」


ああ、彼は気を遣ってくれているのだ。
すみません、と謝罪の言葉を口にしてから私は遺体と少し距離のある場所に座った。包みから出し、付属の棒で練り飴を練りはじめる。江戸川先輩はそんな私を見て満足そうに笑うと再び遺体に視線を落とす。


私の中で、江戸川先輩の印象が決定的に変わった瞬間だった。



**

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黒灰白有無%(プロフ) - 試しにと思い読んでみたら迚も面白かったです!!賭ケ/グ/ル/イは少々爆笑 Aが割と多く出て来るのは珍しいですね。凄く良い話だったので其の儘続編も楽しませて頂きます!! (9月8日 3時) (レス) id: 1ab55170b6 (このIDを非表示/違反報告)
そよそよ - A''''わずか一話で死んだのにいいキャラだった (2023年4月14日 18時) (レス) id: 28bb2962c4 (このIDを非表示/違反報告)
モモンガ←? - すっごくこの作品大好きで何回も読んでます!!七竈ちゃん可愛くて大好きです!!!!!! (2022年8月25日 13時) (レス) id: e4f6a8b567 (このIDを非表示/違反報告)
ミカン - Aはいいキャラしてるんだよなぁ (2022年1月4日 8時) (レス) @page50 id: 168fc3a64e (このIDを非表示/違反報告)
neko - 太宰さん…。 (2020年5月11日 15時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あんず | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2019年6月14日 21時

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