▼.次は天使のいない世界で会いましょう ページ10
※16巻のネタバレあり。
また、特に後半がひどく胸くそ悪い自己満足の鬱話です。
何でも許せる方だけお進み下さい。
あの人は、いつも何かを読んでいる。目が鋭くて、いつもその表情を変えないから、同い年の女の子たちなんかは怖いって言っていたけれど、私はあの知的な顔が好きだった。文章を追う度に動く瞳と、それを追って揺れる短い睫毛が、すごく色っぽい。彼を目で追い始めて、そんなことばかり脳裏にちらつく。
彼を____立原さんを気にするようになったきっかけは、彼が私に声をかけてくれたことだった。
『Aさんは、どうして戦場に?』
『……何ですか、突然』
私は、救護班の一人としてその戦争に参加していた。歩兵師団の内の一つの隊に同行し、軽傷であれば応急処置を、中重傷であれば、どんな怪我をも治癒させる晶子ちゃんがいる基地空母へと送る。立原さんと同じ隊に所属し、それが私の仕事だった。
包帯を巻かれながら、立原さんは私にそう問うた。
『……別に、行けと言われたから来ただけです』
『……そうか』
立原さんは私の答えにそうとだけ言って、自分の腕へと視線を落とす。包帯を巻かれた腕は、きっと前は白くて綺麗だったのだろう。
包帯の端を、銀色の小さなクリップで留める。終わったことを告げれば、立原さんはありがとうと笑った。
……理不尽に怪我を追いながら、どうしてこの人は笑うのか。
そう思いながら、彼の顔を見る。
『……どうして、そんなことを?』
『無理にここに来ているのだとしたら……やけに、丁寧な仕事をするなと思ってね』
そう言われ、どきり、とする。静謐を閉じ込めた瞳が心を覗き込んでくる、そんな感情に、体が固まる。はじめて、そんなことを言われた。はじめて_______“見抜かれた”。彼の目が、何もかも知っているように見えた。
『…… そ、んな、ことより』
声が震える。けれど、話題を変えたくて、一生懸命固まった口を動かした。話していられなかった。話せる訳がなかった。
『立原さんがいつも読んでいる本、……好き、なんですか』
私がそう聞けば、立原さんは一瞬キョトンとして、そしてふわりと笑って、その本__詩集だそうだ__について、教えてくれた。
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硝子屋(プロフ) - 猫また猫さん» 了承ありがとうございます。リクエストですね、少々お待ちください…… (2020年2月24日 23時) (レス) id: c0a77834dc (このIDを非表示/違反報告)
猫また猫 - すみません夢主ちゃんと社長は結婚していない設定でお願いします (2020年2月24日 17時) (レス) id: fa2d4be8dc (このIDを非表示/違反報告)
猫また猫 - 硝子屋さん» リクエスト失礼しつれいしますね!!福沢社長で子どもを預かる話をリクエストしたいです社長と夢主ちゃんは結婚している設定で (2020年2月24日 17時) (レス) id: fa2d4be8dc (このIDを非表示/違反報告)
猫 - あ、全然混浴でなくても大丈夫です!無理をさせてしまいすみませんでした (2020年2月24日 15時) (レス) id: fa2d4be8dc (このIDを非表示/違反報告)
硝子屋(プロフ) - 乱歩信者さん» リクありがとうございます!少々お待ちください…… (2020年2月20日 21時) (レス) id: c0a77834dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:硝子屋+ソーダ | 作者ホームページ:
作成日時:2018年1月25日 6時