◆.指先は繋がらないまま ページ41
窓にかかる遮光布からさしこんだ光に目を開く。朝の光は眩しくて、あまりに眩しくて、つらい。体を起こし、隣に熱がない寝台の上で、私はため息をこぼした。
国木田くんと喧嘩して、もうそろそろ一週間経つだろうか。
きっとこれは、喧嘩と呼ぶにはあまりに子供じみていたと思う。
結局、私たちは譲り合えなかったのだ。
彼が予定に縛られていたいのを、私は共感できなかった。
誰にだってそういうものがあって、私たちはそれを互いに認められなかったのだ。
……そんな言葉で飾ったって、あれは私の我が儘だった。
無意識のうちに何かを抱き寄せようとして、そしてそこに何もいないことに気付く。朝の匂いは久しぶりに透明で、彼女の甘い香りはどこにも落ちていない。
彼女が去った部屋は、思ったより広くて、空虚だ。
『国木田くんはばかだよ』
彼女の言葉が、頬に飛んできた平手打ち以上に、俺の心を抉ったことを思い出す。
『理想とか、予定とか、そんなのにばっか固執して』
もっと大事なことって、あなたには無いの?
そう言って、彼女の瞳に浮かんだ涙が綺麗で、ぎゅう、と心臓が締め付けられたように感じる。
会いたいと言った彼女をすげなく断ったことを、会いに来てくれた彼女を追い出したことを、俺は今も、後悔している。
「……なるほど、最近様子が変だったのはそういうことでしたのね」
「え、変だった? そんなに?」
変でしたわ、とさらりと口にしたナオミちゃんは、紅茶に口をつける。
社と同じ建物内にある喫茶『うずまき』にて、私はナオミちゃんとお昼休みをもらっていた。
谷崎くんと行きたそうにしていたけれど、相談が、と言えば着いてきてくれたナオミちゃんはいい子だ。
……そして年下を頼る私は駄目な先輩だ。
私が何となく注文した珈琲を、ぐるぐるとかき混ぜていれば、「はしたいないですわよ」とたしなめられて、思わず口を尖らせる。
「だって……」
「だっても何もありません。
……Aさんは、仲直りしたくありませんの?」
「し、したいですけど」
「なら謝るべきだと思います。
……すきな人と話せないなんて、辛いですもの」
ナオミちゃんは優しく微笑んでそう呟く。
「大丈夫、国木田さんはそんな心の狭い方ではないと思いますわ」
特にあなたに関しては。
そう言うナオミちゃんが、もう私には女神に見えた。
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硝子屋(プロフ) - 猫また猫さん» 了承ありがとうございます。リクエストですね、少々お待ちください…… (2020年2月24日 23時) (
レス) id: c0a77834dc (このIDを非表示/違反報告)
猫また猫 - すみません夢主ちゃんと社長は結婚していない設定でお願いします (2020年2月24日 17時) (レス) id: fa2d4be8dc (このIDを非表示/違反報告)
猫また猫 - 硝子屋さん» リクエスト失礼しつれいしますね！！福沢社長で子どもを預かる話をリクエストしたいです社長と夢主ちゃんは結婚している設定で (2020年2月24日 17時) (レス) id: fa2d4be8dc (このIDを非表示/違反報告)
猫 - あ、全然混浴でなくても大丈夫です！無理をさせてしまいすみませんでした (2020年2月24日 15時) (レス) id: fa2d4be8dc (このIDを非表示/違反報告)
硝子屋(プロフ) - 乱歩信者さん» リクありがとうございます！少々お待ちください…… (2020年2月20日 21時) (レス) id: c0a77834dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：硝子屋+ソーダ | 作者ホームページ：
作成日時：2018年1月25日 6時
