▼.聖なる夜、悪戯好きな探偵、或いは。 ページ36
12月24日。
クリスマスイブと呼ばれる日。
街は活気に溢れ、温かな家の中では、子供たちがサンタクロースの贈り物を期待して靴下を吊るす。
そんな夜に。
「ねえA、クリスマスイブって何かわかってる?」
乱歩さんはそんなことをいって、私の肩にのしかかってくる。私は読んでいた本から顔をあげて、天井を眺めて考える。
「……一般的に言えば、クリスマスの前日、ってことじゃないの?」
「ぶっぶー。
相も変わらずその頭の中には何が詰まってるのさ」
後ろから私の頭にぐりぐりと顎を押し付けながら、乱歩さんは私に不正解のレッテルを貼る。
……頭が痛い。
「あのねぇ、そもそもイブはイーブニング、つまり“夜”の略。だから、クリスマスイブっていうのは、“クリスマスの夜”ってこと。
クリスマスは24日の夜から25日の昼にかけてやるものだ」
へえー。
気のない返事をして、私は読みかけた本に視線を戻す。すると、今度は頬をぐい、と引っ張られる。
「い、いひゃい」
「ちょっと、まだわからないの?
本当に駄目だねぇ!」
ぱ、と手が離される。
頬がヒリヒリする。何なんだ、と乱歩さんを見ると、不満げに頬を膨らませていた。
「だから!
今、もうクリスマスは始まってるの!」
「うん」
「プレゼントは?」
乱歩さんはずい、と身を乗り出して迫ってくる。
……まさか、5つ年上の恋人に贈り物をねだられるとは思いもしなかった。
目を瞬かせて、ついで視線を泳がせる。
「……ちょっと、手持ちがないかなぁ……」
「あ、そ」
怒られるか呆れられるか拗ねられるか。
何れかが来る、と思って身構えたら、そんなことはなくてポカンとしてしまう。
「むしろ好都合だ」
耳元で声が聞こえたかと思うと、ぎゅ、と後ろから抱き締められる。
本が手から落ちて、ぱたんと音を立てた。
「ら、乱歩さん……?」
「クリスマスプレゼントはこれでいい」
うなじに頭を押し付けられる。
かかったぬるい吐息がくすぐったい。
身を捩ろうとすると、更に強く抱き締められた。
思わずくす、と笑ってしまう。
「今日は甘えん坊だね、乱歩さん」
冗談めかして、そう言う。
すると、何故か腕がほどかれてしまった。
え、と思っていると、今度は私の前に座って腕を広げた。
「え?」
「思えばAから抱き締められたことがない。
だから、抱き締めて」
少し戸惑うも、乱歩さんの目は真剣である。
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硝子屋(プロフ) - 猫また猫さん» 了承ありがとうございます。リクエストですね、少々お待ちください…… (2020年2月24日 23時) (レス) id: c0a77834dc (このIDを非表示/違反報告)
猫また猫 - すみません夢主ちゃんと社長は結婚していない設定でお願いします (2020年2月24日 17時) (レス) id: fa2d4be8dc (このIDを非表示/違反報告)
猫また猫 - 硝子屋さん» リクエスト失礼しつれいしますね!!福沢社長で子どもを預かる話をリクエストしたいです社長と夢主ちゃんは結婚している設定で (2020年2月24日 17時) (レス) id: fa2d4be8dc (このIDを非表示/違反報告)
猫 - あ、全然混浴でなくても大丈夫です!無理をさせてしまいすみませんでした (2020年2月24日 15時) (レス) id: fa2d4be8dc (このIDを非表示/違反報告)
硝子屋(プロフ) - 乱歩信者さん» リクありがとうございます!少々お待ちください…… (2020年2月20日 21時) (レス) id: c0a77834dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:硝子屋+ソーダ | 作者ホームページ:
作成日時:2018年1月25日 6時