▼.熱が冷めないうちに ページ33
(『▼.喉に詰まった菊の花』と『▼.ある朝の睦言』の、間の話)
※ギリギリです。自己満足と深夜テンションで溶けました。
大事にしたいという想いは勿論ある。少し力を込めれば折れてしまいそうな手首も、何処か覇気のない軽やかな声も、その髪の石鹸の匂いですら愛おしいのだから。
それでもなお、自分で花を手折りたい、という想いは膨らむ。全部全部彼女のせいだということにして、すべてぶちまけてしまえたら、どんなに楽か。
「触れてもいいですか」
「お、お好きに」
自分に組み敷かれた彼女は、ばくんばくんと可愛くない音をその心臓で立てながら答える。
見えていなくとも、正解に近いであろう彼女の顔立ちを知っていた。その顔が真っ赤になっているのは想像に難くない。
丸い頬や薄い唇、小さな手にはもう触れた。普段は露出しない首筋から鎖骨にかけて、指をゆっくりと滑らせる。
今となって、見えないというのが煩わしい。声や心音だけでなくて、彼女の善がっている顔を自分の目で見れたらどんなに良いか。想像など、空虚なものに頼らずとも。
「ひ、ぁ……」
鎖骨から肩にかけて撫でれば、彼女は身を捩らせて逃げる。それを逃がさないように、私は彼女の口に蓋をする。
ほどよく力が抜けた彼女の体が温い。
「ず、ずるいです、条野殿、」
「おや、そうですか?」
「ずるいです、」
ずるいずるい、と連呼する彼女の心臓の音は少し小さい。
ずっとずっと、私のことばかり意識して、可愛くないあの心音を聞かせてくれたらいいのに。
「何がずるいと?」
「こ、こんなの、私、何も考えられなくなってしまいます」
どの口が。貴女を考える度に、此方こそ何も“見えなく”なってしまうのに。
そう思って、思わず口許を緩める。
「な、なに笑ってるんですか」
「……馬鹿な人ですね」
「ば、馬鹿って」
「私が、あなたを、何も考えられなくしようとしてるんですよ」
彼女の耳に唇が触れる、そのくらい近いで囁けば、彼女は声にならない悲鳴をあげた。
「そうだ、狡いというなら、私を翻弄してみて下さいよ」
「え、え?」
「名前、呼んでみましょうか」
そう提案しながら、私は彼女の鎖骨に口付ける。すると、「ひぃ、」と大変色気のない声がする。
「条野殿、」
「名前」
「う、」
Aさんは戸惑いの声をあげて。
「採菊さん、……すき、です」
なかなかくるものがあったことは、まだ彼女には言ってやれない。
2019/11/18 硝子屋
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硝子屋(プロフ) - 猫また猫さん» 了承ありがとうございます。リクエストですね、少々お待ちください…… (2020年2月24日 23時) (レス) id: c0a77834dc (このIDを非表示/違反報告)
猫また猫 - すみません夢主ちゃんと社長は結婚していない設定でお願いします (2020年2月24日 17時) (レス) id: fa2d4be8dc (このIDを非表示/違反報告)
猫また猫 - 硝子屋さん» リクエスト失礼しつれいしますね!!福沢社長で子どもを預かる話をリクエストしたいです社長と夢主ちゃんは結婚している設定で (2020年2月24日 17時) (レス) id: fa2d4be8dc (このIDを非表示/違反報告)
猫 - あ、全然混浴でなくても大丈夫です!無理をさせてしまいすみませんでした (2020年2月24日 15時) (レス) id: fa2d4be8dc (このIDを非表示/違反報告)
硝子屋(プロフ) - 乱歩信者さん» リクありがとうございます!少々お待ちください…… (2020年2月20日 21時) (レス) id: c0a77834dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:硝子屋+ソーダ | 作者ホームページ:
作成日時:2018年1月25日 6時