▼.未来永劫を約束 ページ29
「Aが死んだら私も死んでやる」
わたしが包帯を付け替えるのを見ながら、歴代最年少幹部様はそんなことを口走る。日頃死にたいと言っている彼は、わたしに死んでほしいのだろうか。
苦笑しながら、ぱたん、と救急箱を閉じた。
太宰くんがこんなことを言い出したのは、わたしが参加した対テロ組織の制圧戦にて少しばかり重い怪我をしたからだ。
左足の太股と右の肩と腕を狙撃され、更には左足を骨折。身動きがとれず、流石に死を覚悟したが、それを阻止したのは他でもない太宰くんだ。
太宰くんは腰掛けていた寝台から立ち上がり、椅子に座るわたしのもとへと歩み寄ってくる。近くで見ると、知らないうちに包帯がまた増えた気がする。
細く長い指先が、わたしの左太股、銃撃を受けた場所をなぞる。
「……もう痛くはないの?」
「うん。全然平気」
痛みになんて、慣れたくない。
痛みこそ人を人として成長させる要因だ。それが無くちゃ、調教も叱咤も意味がない。
それが無いのは嫌だ。
嫌なのに、体は否が応でも痛みに慣れてしまった。
思わず乾いた笑いがこぼれる。
「ねぇA」
「なに?」
太宰くんは、わたしの輪郭を両手でなぞり、顔を優しく掬いあげる。ひどく冷たい手が、頬を撫でた。
真っ黒な目を、わたしに向ける。
「A、もうマフィアなんてやめておくれよ」
浅く息を呑む。
そして、太宰くんの冷たい手にわたしの手を重ねる。じんわりと、手のひらに冷たい温度が伝わってくる。
微笑みかけると、太宰くんは少し悲しそうにする。年相応、というのはこういうのだろうなぁ、とわたしは思わず笑みを深くした。
「どうして?」
「……Aに死んでほしくない」
……それは困った。
太宰くんがわたしのことを気に入っているのは知っている。でも私はただの構成員だ。本来、幹部の盾にならないといけない者。それが減るのは宜しくないだろう。
「太宰くん、わたしは、」
「私は、私の知らないところでAが死んでるのなんて嫌だよ。
きっと、Aをそんなことにした奴を探し出して、一番酷くて惨くて痛ましいくらい苦しませて殺してしまうと思う」
「……それは凄いね……」
壮絶すぎて想像もしたくない。
思わず笑うと、太宰くんはこつん、と額と額をくっつける。端正な顔は近く、その距離に思わず心臓が跳ねた。
「……二人で逃げれたらいいのにね」
わたしが小さく呟くと、太宰くんは柔らかく笑う。
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硝子屋(プロフ) - 猫また猫さん» 了承ありがとうございます。リクエストですね、少々お待ちください…… (2020年2月24日 23時) (レス) id: c0a77834dc (このIDを非表示/違反報告)
猫また猫 - すみません夢主ちゃんと社長は結婚していない設定でお願いします (2020年2月24日 17時) (レス) id: fa2d4be8dc (このIDを非表示/違反報告)
猫また猫 - 硝子屋さん» リクエスト失礼しつれいしますね!!福沢社長で子どもを預かる話をリクエストしたいです社長と夢主ちゃんは結婚している設定で (2020年2月24日 17時) (レス) id: fa2d4be8dc (このIDを非表示/違反報告)
猫 - あ、全然混浴でなくても大丈夫です!無理をさせてしまいすみませんでした (2020年2月24日 15時) (レス) id: fa2d4be8dc (このIDを非表示/違反報告)
硝子屋(プロフ) - 乱歩信者さん» リクありがとうございます!少々お待ちください…… (2020年2月20日 21時) (レス) id: c0a77834dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:硝子屋+ソーダ | 作者ホームページ:
作成日時:2018年1月25日 6時