94話 ページ48
「来たか」
この数日で何度訪れたかわからないスマイルさんの執務室で、出迎えてくれた彼にぺこりと頭を下げる。小さくうなずいて、彼は私に座るように促した。ふかふかしたソファとガラスのローテーブルは、とんでもなく高そうで萎縮する。
そんな私を知ってか知らずか、彼はスッと一つの箱を取り出して私の前に置いた。紫のリボンが巻かれた、細長い黒い箱で、何だろう、と首をかしげていると開けてみろ、と言われた。
言われたとおりに箱を開く。そして、中に入っているものを見て息を吞んだ。
そこにあったのは、細い鎖がついたシルバーのペンダント。人差し指くらいの長さの円柱形のペンダントトップが特徴的で、紫色の石が一つはめ込まれている。
おしゃれで綺麗だが、見るからに高そうなそれにこれが何か？と首をかしげる。すると、彼はスッとそのペンダントを手に取って、細長いトップに手をかけ、軽く引っ張った。カチッと小さな音がして、トップが二つに割れる。鎖についていない方、つまり取り外された方にあったのは、小さなペン。
「“ボールペンダント”というものだ。冗談みたいな名前だが、働く人間が持ち運ぶにはもってこいだろう。これをお前にやる」
はぁ、機能的なものだな、と関心していると、突然の"やる"宣言。思わず、へ？と声が出る。ぽかんと開いた口は、間抜けな表情を造っているだろう。
「鳩が豆鉄砲を喰らったような顔だな」
ふっと笑って、彼はペンを戻した。鎖の部分を無造作に掴んで、こちらへ差し出す。
いや、でも、そんな高そうなもの受け取れません！！という意味を込めて首を振れば、「幹部からの贈り物を拒むのか？」という一言。その言葉にぐっと詰まる。紫の瞳が、若干細められていた。この人、間違いなく面白がっている。
仕方なしに受け取って、無言の圧を感じたので首に巻いた。シルバーが、白いリボンの上で光る。それを見て微かに笑うと、「もし俺が教えている途中で何かあれば、そのペンで質問してくれ」と言った。＿＿あぁなるほど、勉強のためということか。
……でも、これは普段は隠しておこう、と決意する。あくまで新人の私がこんなものをつけているとなれば、色々な人間を敵に回すだろう。タダでさえ、一部からは目の敵にされているのに。
まぁ、私が何か書くたびにスマイルさんが嬉しそうにしているので、それは良かったな、と思うけど。
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すみれ - 続編おめでとうございます!この作品とても好きです! (2022年10月23日 21時) (
レス) @page2 id: a70cb7c9e5 (このIDを非表示/違反報告)
すみれいん(プロフ) - あの、ちょいちょき面白くてクスッと笑ってしまう所がありとても好きなお話です。これから続きを読んできます！ (2022年7月19日 21時) (レス) @page50 id: a715f4eb82 (このIDを非表示/違反報告)
まほ(プロフ) - めっちゃこの小説が大好きで、この小説を読むでいる時間が一番幸せです(^-^)これからもよろしくお願いします (2021年9月16日 16時) (レス) id: dab527b906 (このIDを非表示/違反報告)
サンセットマリン - スカ一さん» はい、大丈夫です。よろしくお願いいたします。 (2021年9月16日 6時) (レス) id: 58697e3d5e (このIDを非表示/違反報告)
スカ一(プロフ) - サンセットマリンさん» おはようございます、お世話になっております。ご了承頂きありがとうございます。では、今回の件はこれにて終了とさせて頂きたく思います。また、作者名、作品名を伏せて事の経緯の説明を当方の作品内でさせて頂いてもよろしいでしょうか？ (2021年9月16日 6時) (レス) id: c3f5308968 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：サンセットマリン | 作成日時：2021年9月7日 18時
