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ーnomura side.
俺ら芸人が劇場としてよく使うこの建物には、喫煙所がふたつ存在する。
ひとつは、楽屋にほど近いガラス張りの喫煙ルーム。
改装したてで綺麗やしソファもあるし
ほとんどの芸人は此処で一服する。
もうひとつは、屋上の隅っこ。
緑の塗装がはがれかけてる長椅子と、雨でほんのり錆びれたスタンド灰皿がぽつんと置かれた味のある空間。
こっちは知る人ぞ知るといった感じで、古参の劇場スタッフさんか、その場所を知る芸人と仲良くしていれば自然と教えてもらえる。
今日のメンバーはまあまあ若手が多いから屋上に入れることを知ってるやつもほぼおらんやろう。
しれっと消えてひとり優雅に一服でもしにいこう、と屋上に向かえば
珍しい後ろ姿が見えたというわけだ。
『ここ知ってたん？』
「喫煙所ですか？」
『うん』
「この間山名さんに教えてもらいました」
『そうなんや。なんで？』
「なんで？」
『お前喫煙者ちゃうやん』
「…まあまあまあ、」
『え、もしかして』
「最近ちょっとね、私も」
『まじか。意外やな』
「まあまあ」
『何吸ってんの？』
「…見ますか？」
『見たい。見して』
彼女は片手でガサゴソと左ポケットを漁り、取り出されたソレを銘柄もよく見せぬまま俺の手のひらにポスッと押し込んだ。
ひと回り小さなAの手のひらが離れると同時に視線を下へ向ければ、思わずこぼれるため息。
『はあ』
「なんですか」
『…なんやねん』
「なに、って私の嗜好品ですよ」
『シガレットでイキがるとかクソガキやん』
「ははは。いいじゃないですか別に、イキがったって」
『だっさいわぁ』
「一本いります？」
『結構ですー。自分の、あるんで』
「ふふ、そうですか」
静かに微笑む彼女へ小さなニセモノを押し返し、すぐさま胸ポケットに仕込んでいたホンモノを取り出して火をつけた。
一応、気遣ってAの方に煙がいかないように気持ち右側へ向かって煙を吐き出すと
「タバコ、」
Aが小さな声でぽつりと呟いた。
『ん？』
「ほんとは持ってるんです」
ほら、と見せてきた箱は
先ほどとは打って変わって、紛れもなくホンモノのソレ。
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musubi.(プロフ) - ユキさん» 貴重なご意見ありがとうございます！作者としましては櫻井さんもまた中々に捗りがちなので、移転先でもちょこちょこ作品を投稿したいと考えてます^_^ (2021年9月10日 20時) (
レス) id: 2c2c22a77b (このIDを非表示/違反報告)
ユキ - こんにちは。どのお話も素敵で大好きですが、櫻井さんのお話が本人のイメージにぴったりでした。更新楽しみにしています。 (2021年9月9日 20時) (レス) id: 03f475eb75 (このIDを非表示/違反報告)
musubi.(プロフ) - na__175さん» まさか感想をいただけるとは…！この度はコメントいただきありがとうございます！今後も、リアルでキュンとする作品をお届けできればと思っております^_^ (2021年9月5日 22時) (レス) id: 2c2c22a77b (このIDを非表示/違反報告)
na__175(プロフ) - 野田さんの作品、セリフの感じが本人ぽくてキュンときました、、、、また楽しみにしています！ (2021年9月5日 20時) (レス) id: 24730842e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：musubi. | 作成日時：2021年1月12日 23時
