鬱屈とした空の果て(S.Nomura) ページ34
ーyour side.
了解です、と。
マネージャーに簡潔な返信を送って画面を閉じる。
どことなく口寂しくなって、ポケットに忍ばせた小さな箱を取り出そうとしたけど、結局やめて。
薄灰色の雲が広がる空をぼーっと眺めた。
遡ること10年前。
楽しいことを思うがままに表現したくて、自由になりたくて、ひとりでお笑いの世界に飛び込んだ。
はずなのに。
いつからか、求められるものに忠実に従っていく日々が増えていった。
モヤモヤする気持ちとは裏腹に、順調に増えていく仕事。
単独を打てばほぼ満席。
面白いと評価してくれる世間、そして業界関係者。
誰かのチカラで出来上がった世界に染まるのはとても簡単で、ラクだ。
その代わり
なんにも楽しくない。面白くもない。
このままバカなフリしてヘラヘラ笑って芸人を続けていれば、きっといつか壊れてしまうかもしれない。
なんてぼんやり考えていると
『わっ』
「わっ！！」
突如として耳に響き渡る低めの声に
気持ち大きめな両手のひらを肩に感じて振り向けば
意地悪くニヤリと笑う野村さんの顔があまりにも近くにあってギョッとした。
「びっくりした。お疲れ様です」
『こんなとこに居ったんか』
「え、もしかして探してくれてました？」
『いやそういうわけでもないけど』
「なーんだ」
『お前いつも誰かしらと群れてるから珍しいなぁ思って』
「うーん。今日は、ちょっとそういう気分じゃないっていうか」
『ふーん』
「誰も来なさそうなとこでぼーっとしたくて」
『…あーごめん、来てもうたわ』
「いえいえ。野村さんなら歓迎です」
『先輩やからって気遣わんでもええぞ』
「いやほんとに、全然」
『ん、そうか。ほんなら、お隣失礼します』
「はい。どうぞ」
残り少ないペットボトルの水をクッと飲みほし、野村さんは私の右横にヨイショと腰を下ろした。
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musubi.(プロフ) - ユキさん» 貴重なご意見ありがとうございます！作者としましては櫻井さんもまた中々に捗りがちなので、移転先でもちょこちょこ作品を投稿したいと考えてます^_^ (2021年9月10日 20時) (
レス) id: 2c2c22a77b (このIDを非表示/違反報告)
ユキ - こんにちは。どのお話も素敵で大好きですが、櫻井さんのお話が本人のイメージにぴったりでした。更新楽しみにしています。 (2021年9月9日 20時) (レス) id: 03f475eb75 (このIDを非表示/違反報告)
musubi.(プロフ) - na__175さん» まさか感想をいただけるとは…！この度はコメントいただきありがとうございます！今後も、リアルでキュンとする作品をお届けできればと思っております^_^ (2021年9月5日 22時) (レス) id: 2c2c22a77b (このIDを非表示/違反報告)
na__175(プロフ) - 野田さんの作品、セリフの感じが本人ぽくてキュンときました、、、、また楽しみにしています！ (2021年9月5日 20時) (レス) id: 24730842e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：musubi. | 作成日時：2021年1月12日 23時
