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ミミ ページ13

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「キュリちゃん、寝ちゃいました」
『え!』


後から顔を覗くと目を閉じたキュリちゃんが、
口をもごもごと動かして眠っていた。
まるで我が子を見るように微笑むラパンさんは、
キュリちゃんのほっぺたを優しく撫でて、
起こさないように小さな声で「可愛いなあ」と言った。


『ふふ、本当に可愛い』


私もいつの間にか細い髪の毛を撫でていた。
お遣いをして、バターワッフルを食べて、
沢山お喋りをしたから眠くなったんだろう。
ふと思ったのは、お遣いに行ったまま
なかなか家に帰ってこないキュリちゃんのことを
お母さんが心配しているかもしれないということ。


『寝ちゃったし、お家まで送ってきます』
「あ、僕。抱えますよ」


キュリちゃんを抱っこしようとしたら、
ラパンさんがキュリちゃんをひょいと抱き上げた。


『すみません、ありがとうございます』
「いえいえ」


扉の方に向かいながら、ラパンさんは言った。
私はキュリちゃんが買ったパンの紙袋を持って、
ゆったりと歩きながら、ラパンさんの横顔をじっと見る。

声を掛けたいと思ったけれど、
何も浮かばなくて、私の口はいつまでも閉じていた。




「あの、メルさんって本名ですか?」


沈黙はラパンさんによって終止符を打たれた。
キュリちゃんが私のことを
「メルちゃん」と呼ぶのを聞いて、
「メルさん」と呼び、本名かと尋ねられたのだ。


『ううん、あだ名です
ここら辺の人はみんなそう呼ぶんですよ』
「へぇ〜」


ラパンさんはそう言ってニッコリ微笑み、
「僕もメルちゃんって呼んでいいですか?」
と提案したので、「もちろん」と私は頷き、
ラパンさんの名前を伺った。


「僕はジスです」
『…ジスさん』


初めてラパンさんの名前を耳にして、
“ジス”と新たな名前をつけた。

元々ついていた名前に「よく似合ってる」なんて
なんだか変だと思われるかもしれないけれど、
心地のいい綺麗な響きがラパンさんにぴったりだった。




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あんず(プロフ) - なんか憧れるパン屋さんで、すごい行きたくなりました!、 (2018年6月2日 0時) (レス) id: c19e297b48 (このIDを非表示/違反報告)
Eill Rie(プロフ) - 楽しく読ませていただきました。メルさんの小さなパン屋さん、実際にあったら行ってみたいものです^^ (2018年5月21日 12時) (レス) id: 3073d54efc (このIDを非表示/違反報告)
早苗 - 名刺とお店の絵凄く可愛いです!!こんなお店があったら毎日行きたいですw (2018年5月12日 13時) (レス) id: 9d45fbd028 (このIDを非表示/違反報告)
早苗 - とても面白い作品で大好きです。これからも応援してます! (2018年5月7日 22時) (レス) id: 9d45fbd028 (このIDを非表示/違反報告)

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作成日時:2018年4月29日 21時

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