メル ページ1
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ベッドで目を覚ました私は
よろよろとクローゼットに向かって
着替えを済ませると洗面所で顔を洗い、髪を束ねる。
まだ街が静けさに包まれる早朝。
花柄のエプロンを巻きながら厨房に入り、
昨日仕込んだ生地を成形し、石窯で焼く。
一番に焼く｢メロンパン｣はうちの看板で、
夏になれば横から切込みを入れ、
間にアイスクリームを挟んで食べるのが
｢メル｣通の楽しみ方だ。
次々に焼けていくパンを窯の外に出しながら
｢朝ですよ〜｣と二階で眠る弟に声を掛ける。
もの音を立てながら目を覚ました弟が
よろよろと厨房に入って来て
冷蔵庫の牛乳をゴクリと飲んだ。
もう片方の手には
通学バッグが握られている。
『おはよう、ウヌ』
「おはよう、Aヌナ」
『ネクタイずれてるよ』
「あ、本当だ」
制服のネクタイを直す彼の視界に
窓からの朝日が差し込み、
眩しそうに目を細める。
弟のウヌはこの春、
高校三年生に進学した。
そんな彼の朝ごはんは
種類別にずらりと並べられた
焼きたてホヤホヤのパン。
いつも何を食べるか決まっている癖に
顎に手を当て視線をぐるりと一周させるのだ。
「じゃあ、これとこれにしよう」
『やっぱりね』
最近お気に入りのクランベリーや
くるみがたっぷり入った
丸い麦パンと薩摩芋のデニッシュを
お客さんと同じように陳列されたケースから
トングでトレイに置く。
ウヌは辛いものが苦手な甘党信者だ。
「今日も美味しそう」
私がいつも座っている
レジカウンター前の椅子で
欠伸をひとつしてそう言うと目元を拭って
宝石のようなデニッシュを手に取り、
｢いただきます｣の言い終わりくらいで口に含む。
床の掃き掃除をしながら
暫くウヌと会話をしていた私は、
アンティークな電話機から
ジリジリジリと呼び出された。
〆
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あんず(プロフ) - なんか憧れるパン屋さんで、すごい行きたくなりました！、 (2018年6月2日 0時) (
レス) id: c19e297b48 (このIDを非表示/違反報告)
Eill Rie(プロフ) - 楽しく読ませていただきました。メルさんの小さなパン屋さん、実際にあったら行ってみたいものです^^ (2018年5月21日 12時) (レス) id: 3073d54efc (このIDを非表示/違反報告)
早苗 - 名刺とお店の絵凄く可愛いです！！こんなお店があったら毎日行きたいですw (2018年5月12日 13時) (レス) id: 9d45fbd028 (このIDを非表示/違反報告)
早苗 - とても面白い作品で大好きです。これからも応援してます！ (2018年5月7日 22時) (レス) id: 9d45fbd028 (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時：2018年4月29日 21時
