はちみつ色の日々 ２

＊ ページ42

.


一目惚れしたのは初めてだった。

あまり顔から好きになるタイプではなかったけど
ド直球にこの人の顔が好きって思って
誰にでも人懐っこい笑顔を見せるとことか、さり気にこうやって気が利くとことか。

目で追えば追うほど、もう私は北山さんから目を離せなくなってたんだ。






「なんかすみません…、気使わせちゃって」





一瞬でこんなに好きになってしまったからこそ
もう今の状況に内心バックバク。

何か話さないと、と出た言葉が
なんとも可愛げない謝りの言葉って……。




「全然、ちょい外の空気吸いたかったしAちゃんと話したかったし」

「…………え？」




その言葉に思わず立ち止まってしまった。

だけど少し先を歩く北山さんは気付かずにどんどん足を進めるから
首を傾げながらもまた私も足を進めて。


…………空耳？

私と話したかった、だなんて
パニック状態での都合のいい幻聴だったかも。





「前飲んだとき、全然話せなかったよな〜」

「ですね…、私ちょっと人見知りで」

「ていうかそれ以前にさ、あいつ。
中沢がずっとAちゃん独り占めしてんだもん」

「中沢……？」




あぁ、さっきまで私に話しかけてくれてた人か。

確かに前の飲み会の時も
いまいち馴染めない私に気を使ってか話しかけてくれてたっけ。





「………もしかして中沢といい感じ？」




また立ち止まってしまったてた私に今度は気付いてくれたらしい北山さん。

振り返って私の顔を覗き込むように近づいてくる。





「えっ、いや、全然っ！」

「ふはっ、全然って」



それはそれで失礼じゃね？って吹き出したように目の前で笑うから
街灯の下に映し出されるその笑顔にまたキュンとした。



……間近で見る笑顔、可愛すぎる。





「ま、でも良かったわ。安心した」

「え？なにが、

「よし、とりあえずコンビニ行こうぜ♪」





なぜかウキウキと楽しげになった彼は
まだ立ち止まってた私の腰元に触れてきて、歩幅を進めるように促してくる。

北山さんは何気なく触れてるだけかもしれないけど
私はそれだけでもう、全身ぶわっと熱くなってしまった。


良かった、暗い道のりで。

＊→←初めてのキス

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す