はちみつ色の日々 ２

初めてのキス ページ41

.


「Aちゃん、飲んでる〜？」

「あ、はい、飲んでます」





高いテンションで距離感近く
話しかけられるこういう場が私は苦手だ。

ちびちび口にしてたチューハイ缶を掲げて無理やり笑顔を作るけど
次に繋がる話題を見つけることも出来ず、私はただその人が話すことを聞いてるだけ。





「あの、ちょっとお手洗いに…」

「お、いってらっしゃい」




悪い人ではないんだけど
私なんかと話してても楽しくないんじゃないかなって思うと
この場から逃げたくなっちゃう。

男の人が四人と、私を含めた女の子が四人の
いわゆる合コン的な飲み会で
このメンバーで集まったのは二度目。

一度目はお店での集まりだったからまだ良かったものの
今回は宅飲みだから余計にハードルが高い……
距離感が一気に近くなるんだもん。


それでも私がこの集まりに来た理由は
一目惚れした人がいたから。






「やば、お酒もうないよ〜」

「あ、じゃあ私買ってくるよ」

「ほんと？A一人で大丈夫？」

「うん、平気平気！すぐそこにコンビニあったよね」




お手洗いから戻るとちょうど冷蔵庫前にいた友達からそう聞いて
少し火照ってる体を冷やすためにも財布を手に部屋を出た。

そして少し冷たい風が吹く暗い道を
ここへ来た時の記憶を辿ってコンビニへ向かおうとした。


その時、





「待って待って、俺も行く」




って、マンションから出てきたその人に目を丸くした。

だってその人は、




「北山さん……っ」




私が一目惚れした人だったから。







「なーにひとりで買い出し行こうとしてんのよ、危ないっしょ」





駆け足で私の隣まで来ると
寒そうに少し長めの袖で手を覆った。





「でもすぐ近くにありましたよね？コンビニ」

「だとしても危ないし、帰りの荷物の重さえげつないと思うけど」

「……それは確かに、」




お酒を何本も買って帰るその重さのことまで考えてなかった。

何も考えてなかった私に北山さんは笑ってて
行こうか、って私の少し前を歩くから慌てて足を進めた。

＊→←＊

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す