はちみつ色の日々 ２

幼馴染み ページ32

.



「宏くん！肉じゃがー！」


「お、サンキュ」





幼馴染みの宏くん。
物心ついた頃からずっと一緒で
おうちも隣同士、ひとつ上のお兄さん。





「ちょうど良かった、今日母ちゃんいねぇしおばさんにお礼言っといて」


「え？じゃあ今日宏くんひとり？」


「そ、じゃあな」


「まーって待って！
だったら家で一緒に食べようよっ」


「え〜……、」




肉じゃがだけでいいんだけど、って心の声が丸聞こえかのようなお顔。





「あと少しなんだから
ちょっとでも一緒にいたいのに……、宏くんは私のことなんてどうでもいいんだ…」


「分ーったよ、ったく」





大袈裟にいじけると
こうやって何だかんだで要求に答えてくれる。

ちょっと待ってろ、って部屋の中に上着を取りに行くから
宏くん家の香りがする玄関に入って
ドアにもたれかかった。




もうすぐ宏くんは
高校を卒業して大学に通いながら一人暮らしを始めてしまう。
お隣同士っていう関係はなくなって
気軽にも会えなくなるから、寂しくてたまらない。






「お待たせ、行くか」


「うん」





お互いの家に行き来することもなくなるし
顔を見たい時に見れることもなくなっちゃうんだよね……。






「はー、寒っ 」


「もう今年も終わるもんねぇ」





年が明ければきっとあっという間に春になる。





「宏くん」


「ん？」


「好きなんだけど」


「分かってる」


「なにその冷めた返答っ！」


「もう何万回も聞いてっから、それ」


「……返事くれないからじゃん、」





初めて気持ちを伝えたのは小学一年生の時だったかな。

まだ恋愛という感情すらよく分かってない時から
ずっと私は宏くんが好きだった。

優しくて、色んなことを知ってて
たまに意地悪もされるけど、楽しそうに笑ってくれるとこ。
私の生きてきた17年間の中で
宏くん以上に魅力的な男の人に出会ったことがないもん。






「Aのその気持ちは恋愛感情じゃねぇって」


「そんなわけないじゃん！」


「ちゃんと周りに目向けろよ。
高嗣とかどうよ？きっと大事にしてくれるぞ」


「絶対いや」





私のこの気持ちを真剣に受け取ってくれないから
気付けばもうすぐ離れ離れ。

どうしたらこの気持ちが伝わるのかも
まだ子供の私には何も分からなかった。

＊→←＊

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す