はちみつ色の日々 ２

＊ ページ13

.


「じゃあ久々の出会いに、かんぱーい」




みつの行きつけらしいお店に連れてきてもらって
グラスをカチンと合わせる。

なんだか急展開すぎるけどいいのかな、
だって私………、




「あれ？結婚してんの？」




そう、結婚してる身だから。






「あ、うん……」




お酒を一口含んで
みつの視線から指輪を隠すように手を握りしめた。





「へぇー」


「な、なに？」


「昔は俺と結婚するっつってたのになーって思って」


「え、覚えてたの？」


「そりゃ覚えてるだろ〜。
俺が初めてプロポーズした女の子だもん」





嬉しかった。
私だけじゃなくてみつまで覚えててくれたなんて
もうそれだけで十分だって思えちゃうくらい。





「でもまさか今や大スターのみつが
まだそんな約束覚えてるだなんて思わないじゃん」


「大スターって、全然だよ別に」


「そんなことないよっ。
初めてテレビで見かけた時本当に驚いたよ〜！
名前も顔も同じ人が急にテレビに出てるんだもん」


「だよな〜。
俺もまさかあの時はこんなんなるなんて思ってなかったし」


「私毎年コンサートも行ってるんだよ」


「まじ？！」


「ふふ、まじだよ〜。
割と神席だった時みつと目が合った気がしたんだけど
やっぱり気付いてなかったか」


「………あー、あん時か」


「うそ、絶対知らないでしょっ」


「はははっ」





20年以上の月日が流れたなんて嘘みたいに
あの頃と変わらないこの心地良さ。

お酒と、みつが頼んでくれた美味しい料理をつまみながら
途切れることもなく他愛ない話をし続けた。






「そういや母ちゃん元気？」


「うーん多分……。
相変わらず色んな男の人のとこ行っては浮気されっての繰り返してるみたいだから」


「まじか〜。
でももうAも結婚したんだもんな、平気？」


「う……ん、」





ドキッとしてしまう。

平気なんかじゃないんだもん、
小さい頃から母の男と紹介された男たちと
私が信じて結婚した旦那は結局一緒だった。



浮気………、されてた。

＊→←人妻

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す