恋愛注意報

２５ ページ25

───研修初日。





「おはよ、北山くん」


「はよー」







朝早くの駅の集合場所に現れた北山くんは
おっきなアクビをしながらだるそうに歩いてきた。








「眠いの？大丈夫？」


「ん、いつものことだよ朝眠いのなんて」


「そうなんだ？
あんまり朝早く会うことないもんね。
北山くんバイト入るの、大学終わってからとか午後からだし」


「ん〜、Aちゃんは元気だな〜」


「私はババァだからね、朝は得意だよ」


「だからババァじゃねぇって」







いつもより口数も少なくて
また喋りながらもおっきなアクビして、
まじで眠そうな様子が可愛い。








「あ、バス来たみたいだよ」





すぐに来た会社の貸切バスに乗り込むと
他の店舗の人達がもう数人乗っていて
挨拶をしながら、後ろの方の席へと二人隣同士で座った。







.









「ね、お菓子食べる？」


「お菓子って、遠足かい」


「ふふ、気分は遠足〜♪」


「じゃあなんか腹持ちしそうなの食いたい、
飯食ってねぇから腹減った」


「え？
そんな朝ご飯になるようなものはないよ？」







チョコにお煎餅に、飴玉やら。

鞄をガサゴソ漁ってみるも
ザ・お菓子☆ってのしか見当たらない。








「あ、じゃあそのドーナツ食いたい」


「うん、おいしいよこれ」


「あーん。」


「え？なに？」


「眠いから食わして」


「はぁ？自分で食べてっ」


「けーち」







少し唇を尖らせながら、ドーナツを受け取ると
一口サイズの駄菓子のドーナツを一気に頬張った。







「んまっ」


「私にもひとつ頂戴っ」


「はい、あーん」


「い、いいよっ、自分で食べるからっ///」


「ふはは、照れんな照れんな」







少し掠れた笑い声。

北山くんの声って
こうしてすぐそばの隣同士の距離感で聞くと
ものすごく独特で、甘くて変にドキドキする。






.








「やべ、食ったらまた眠気襲ってきたわ〜」


「寝てもいいよ？着いたら起こすから」


「でもな〜寝たらもったいねぇなぁ」


「ん？なにが？」







なんのことか分からずそう聞くも
私のその質問はスルーされて
おもむろに足元のカバンからイヤホンを取り出すと片方を自分の耳につけた。








「はい、一緒に聞こ？」









残った片方分のイヤホンを差し出されて
戸惑う私に構うことなく、右の髪を耳にかけるとイヤホンを耳に押し込んだ。

２６→←２４

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す