66,適任 ページ16
倉木「あ、今は大丈夫です。
安心してください」
碧井「はい…」
かなり突発的なカミングアウトだった。
倉木「まぁ、好きというか…顔が好みだったんで」
碧井「…それだけですか?」
倉木「それだけです」
……他にも可愛いところ沢山あるのに。顔だけ?
倉木「アイツ、昔から顔は良かったと思いますけど
成長して更に可愛くなったというか…
綺麗と可愛いのバランスが丁度好みだったんですよね」
碧井「はぁ…」
淡々と聞かされる内容が頭に入ってこない。
そんなサラッと言われるなんて思わないもの。
倉木「再会した日に気に入って、狙ってたから
この店も紹介しました。その後も会いたかったんで」
碧井「…今は、大丈夫なんですよね?」
倉木「はい。だってアイツ酔うと面倒臭いじゃないですか」
碧井「随分ハッキリと…」
倉木「ははっ、すみません。
でも友達とかお客様なら全然一緒にいても楽しいと思える
範囲内ですよ。…だから友達でいるくらいがベストです」
碧井「ああ…
それを聞けてちょっと安心しました」
価値観は人それぞれだもんな。
倉木「それともう一つ。身を引いたワケがあります」
碧井「…?」
倉木「俺よりも碧井さんの方が適任だと思ったからですよ」
碧井「適任…ですか…?」
倉木「友達には楽しい恋愛をしてほしいですからね」
碧井「…!」
倉木「碧井さんの事も応援してるんで!
何かあったら愚痴でも何でも言ってくださいね!」
碧井「ありがとうございます」
彼との距離も、客と店員の立場ではあるが
以前よりも近くなったように思える。
こうやって相談を聞いてもらえるのも、とても有難い。
ヴーッ
碧井「!」
スマホのバイブレーションが鳴った。
何の通知だろう?
碧井「……え」
『A:ごめん。今日は行けなくなった』
碧井「…っ」
彼女からのメッセージだった。
倉木「どうかしました?」
碧井「Aちゃん、来れないそうです…」
こんな事、今まで無かったのに。
倉木「また残業ですかね?」
碧井「そうだと良いんですけど…」
倉木「………」
さっき話したばかりだ。
俺が何を心配しているのかを察して
言葉を失う倉木さん。
倉木「…とりあえず飲みますか」
碧井「あの…マティーニをください」
急に不安でいっぱいになり
酔いで気を紛らわせるしかなかった。
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作者名:麦兎 | 作成日時:2021年10月21日 0時