040 独り占め ページ40
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大貴｢なんか食べる？｣
｢…………、｣
大貴｢……A？｣
はっ、と我に返る。
隣からわたしの顔を覗き込む彼は小さく笑っていて、どこか上の空だったわたしの心も、全て見透かしているかのよう。
少し離れたところにある花火大会の会場は、所狭しと屋台が並んでいて、待ち合わせした公園とは比べ物にならないくらいの人混みだった。全てが初めての体験。お祭り独特の熱気や蒸し暑さに少し負けそうになっているわたしに、大貴くんは気づいていた。
大貴｢帰ろっか。｣
｢え？｣
大貴｢疲れたんでしょ(笑)｣
決して嫌味っぽくなく。むしろ少し可笑しそうに。
｢そ、そんなこと……｣
大貴｢いいよ無理しなくて。人多いし、酔ってくるよね。俺もちょっと疲れちゃった。｣
笑ってるけど、本当かな。優しい言葉なのに、なんとなく受け入れてはいけない気がして。だってこれはデートなのに。夜空に浮かぶ大きな花火を、わたしに見せたいと言ってくれたのに。疲れただなんて、そんなの………
大貴｢別に、花火はここからじゃなくてもいいんだよ。通い慣れた砂浜とかさ。｣
｢でも………、｣
大貴｢２人きりのほうが、独り占めできるし。｣
｢………独り占め？｣
大貴｢うん。Aの浴衣姿ね。｣
｢っ、｣
ずるい。何でもないような顔して。
大貴｢気づいてないと思うけど、すっげー見られてっから。A見てコソコソ喋られんの、嫌なんだよね。｣
｢、嫌なの？｣
大貴｢………そ、りゃ嫌でしょ。好きな子だし。｣
だから丁度いいよ、って。
少し照れくさそうに目を逸らした大貴くんは、くるっと向きを変えて歩き始める。こうやって何気ない会話の中に『好き』って言葉が出てくること、大貴くんは慣れっこなのかな。何とも思わないのかな。
なんだか色んな思いが巡ってきて、優しいな…って。その背中を見つめて立ち尽くしていたら、離れていく大貴くんとの間に人が溢れかえり、たちまち見えなくなってしまった。
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むぎ(プロフ) - まくるさん» ありがとうございます！大変なご時世だからこそ、少しでもみなさまの息抜きになればと思っています(^ ^) この新作もキュンキュンしていただけるように頑張ります。これから色んな展開が出てきますので、最後までよろしくお願いします☆ (2020年7月4日 19時) (
レス) id: 88d801cec9 (このIDを非表示/違反報告)
まくる(プロフ) - 初コメント失礼します。新しい作品ですね、おめでとうございます！いつもキュンキュンしながらむぎさんの作品を拝見させて頂いております。こんなご時世で大変かもしれませんが、自分のペースでいいので更新頑張って下さいね♪ (2020年6月28日 18時) (レス) id: 968d5c61de (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：むぎ
| 作成日時：2020年6月28日 15時
