037 スルーが正解 ページ37
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『好きな子が着てるの、見たことないから。見てみたいんだよ。』
『深く聞かないで。わかるでしょ。』
大貴くんが立ち去った今も、残された居間でひとり、速くなる鼓動と闘う。
わかるでしょ、って。そういうことだと思っていいの？わたしだけじゃないって、そう………
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・
ユキ｢きつくない？｣
｢はい。大丈夫です。｣
ユキ｢ん。じゃあ今度は……｣
夕方。またもや大きな荷物を抱えてやった来たユキさんによって始まった浴衣の着付け。どうやら初心者はひとりでは着られないものらしく、一から丁寧に着せてくれている。
ユキ｢わたしが？どうしても着せたいって？｣
｢違うんですか？｣
ユキ｢ふふ。でも大貴が言ったんだもんね。そういうことでいいや。｣
どうしても着せたかったのよー、なんて大袈裟に言い始めたユキさん。あれ、嘘だったのかな。さっきからユキさんクスクス笑ってるし。
ユキ｢ほんっと、どこまでも臆病よね。男って。素直に浴衣姿が見たいって言えばいいのに。｣
｢………、｣
ユキ｢あ、今の聞かなかったことにし…｣
｢あの、………今朝、大貴くんが、｣
ユキさんの言葉を遮るようにして口を開いたわたし。今朝から胸に抱えていた大貴くんの言葉の意味を、尋ねる相手は彼女以外に見つからなかった。
ユキ｢嘘、あの子がそんなこと言ったの？｣
｢………はい、｣
『好きな子』
『わかるでしょ』
どこか照れたようなその言葉たちに、何も返せなかった今朝のわたしこそ臆病者だ。
ユキ｢それはね、スルーが正解よ。｣
｢へ……？｣
ユキさんの反応は予想外だった。もっとうまく、と考えていたわたしの思考を華麗に通り過ぎていく。
ユキ｢それを告白と捉えちゃったら、男なんてそれに甘えて何も言ってこなくなるわよ。だから深く聞かなかったことも、『ありがとう』とか『わたしも』とか変に返さなかったことも正解。｣
｢…………そう、なんですかね。｣
ユキ｢そうそう。甘やかしちゃだめよ。最初が肝心。それに、あなたが何も返さなかったおかげで、今日の花火大会が余計に楽しみじゃない？｣
｢へ………？｣
ふふふ、と楽しそうに笑ったユキさんは、ここでその会話を終わらせてしまった。
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むぎ(プロフ) - まくるさん» ありがとうございます！大変なご時世だからこそ、少しでもみなさまの息抜きになればと思っています(^ ^) この新作もキュンキュンしていただけるように頑張ります。これから色んな展開が出てきますので、最後までよろしくお願いします☆ (2020年7月4日 19時) (
レス) id: 88d801cec9 (このIDを非表示/違反報告)
まくる(プロフ) - 初コメント失礼します。新しい作品ですね、おめでとうございます！いつもキュンキュンしながらむぎさんの作品を拝見させて頂いております。こんなご時世で大変かもしれませんが、自分のペースでいいので更新頑張って下さいね♪ (2020年6月28日 18時) (レス) id: 968d5c61de (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：むぎ
| 作成日時：2020年6月28日 15時
