035 なんて良い人 ページ35
.
なんて良い人なの……？
海の中では悪者だった『人間』が、大貴くんのおかげで今は輝いて見える。ほらね、お父様。人間だって悪い人ばかりじゃない。むしろ良い人で溢れてる。ゴミを捨てる人がいれば、拾う人もいるんだよ。
｢……ありがとう大貴くん。｣
大貴｢ん？｣
何言ってんの、とでも言いたげにわたしの潤んだ瞳を見て笑う大貴くん。
大貴｢海側の意見？(笑)｣
｢っ、｣
大貴｢何だよその顔。ほら、手伝って？｣
やばい、と思ったわたしの顔が可笑しかったのか、大貴くんはクスクスと笑って楽しそう。
渡されたトングで、大貴くんの持つゴミ袋に次々とゴミを入れていった。いつの間にか涙も引っ込んだけど、海の生き物、即ちわたしたちのことを、大事に思ってくれている大貴くんに胸が熱くなる。やっぱり彼を好きになってよかった。会いにきてよかった。
大貴｢なぁに、どしたの。｣
｢へっ？｣
突然甘い声で話しかけられて、動揺してしまう。
大貴｢ずっとこっち見てるからさ。なんか言いたいのかなーって。｣
｢…………、｣
大貴｢気のせいか(笑)｣
気のせいなんかじゃない。
わたしは海の生き物なの、人魚姫なの、あなたに会いたくて人間にしてもらったの。あと4日で溶ける魔法。触れられない理由。大好きな気持ち。
伝えたいことは山ほどあるのに、ひとつも言葉にできないのがもどかしくたまらなかった。気のせいかと笑う大貴くんに返す言葉もなく、黙り込んでしまう自分は誰よりも臆病者だ。
別に言ったっていいのに。わたしは人魚姫だって。誰かに口止めされてるわけじゃない。だけどどうしても言えないのはやっぱり、
いずれ訪れる別れが、何よりも辛いから。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 527人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「Hey!Say!JUMP」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
むぎ(プロフ) - まくるさん» ありがとうございます！大変なご時世だからこそ、少しでもみなさまの息抜きになればと思っています(^ ^) この新作もキュンキュンしていただけるように頑張ります。これから色んな展開が出てきますので、最後までよろしくお願いします☆ (2020年7月4日 19時) (
レス) id: 88d801cec9 (このIDを非表示/違反報告)
まくる(プロフ) - 初コメント失礼します。新しい作品ですね、おめでとうございます！いつもキュンキュンしながらむぎさんの作品を拝見させて頂いております。こんなご時世で大変かもしれませんが、自分のペースでいいので更新頑張って下さいね♪ (2020年6月28日 18時) (レス) id: 968d5c61de (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：むぎ
| 作成日時：2020年6月28日 15時
