096 あなたしかいない ページ47
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名取side
握った左手の細い指には、少し傷ついた指輪が光っている。
そう、あの時………
“あ、名取先生。Aちゃんの左手に…”
聞こえなかったその続き。
Aのもとへ辿り着いて、左手を見たらすぐにわかった。きっと、事故に遭った衝撃で外れてしまったであろう指輪を、弱々しい力で必死に握りしめていた。
俺は泣きながら、その指にはめたんだ。
それが今も、Aの薬指にちゃんと光ってる。岡本も、きっと通さずにいてくれたんだろう。これは自分の仕事じゃない、そう思ったのかもしれない。
まだ少しかすり傷の残る頬を撫でる。顔にかかった髪を耳にかけ、
名取「………………」
唇にそっと口付けた。
しばらくそのまま、Aの体温を感じ取って。ふっと唇を離して元に戻った、その時……
名取「、A?」
「………、」
名取「A?わかるか?」
いつになく慌てる俺に、弱々しく微笑む。
「…………あり、がとう。……助けて、くれて。」
名取「……いや、…………俺は、何も………あ、あの、赤ちゃん、生まれたんだよ。元気だった。お前に似て、可愛くて、」
「落ち着いてよ、」
可笑しそうに笑う。
「あの時……ちゃんと聞いてたよ、」
名取「え、?」
「……わたしにも、颯馬しかいないからね。」
名取「っ、」
愛おしい、とはこういうことを言うのだろう。たまらなくなって抱きしめた。また零れそうな涙を堪えて、きつくきつく。
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しゅあ(プロフ) - 初コメ失礼します!もうハッピーエンドで安心致しました。うるうるしながら最終的に号泣でお話読んでました!最後の救命メンバーからの一言には少しクスッとしてしまいました(笑)本当にこの作品作って下さりありがとうございました! (7月23日 0時) (レス) @page50 id: d9ff4faa7c (このIDを非表示/違反報告)
asumin110(プロフ) - 多分初めてコメントをすると思います!既に何回か読んでます!いつ読んでも感動しますし引き込まれます!山田先生も好きだったんじゃ…?って毎回思うのですがそこはもうそう思ってしまっていいのでしょうか(^ ^)?わら 続編書く気になりましたら楽しみにしています! (2022年5月22日 1時) (レス) @page50 id: 310d1e6e98 (このIDを非表示/違反報告)
う - 復帰するお話が見たい (2021年4月18日 2時) (レス) id: 5513b83dfa (このIDを非表示/違反報告)
知念菜々(プロフ) - 完結おめでとうございます!!続編で育休が明けて病院に復帰する話が見てみたいです! (2020年2月9日 16時) (レス) id: 70738b0893 (このIDを非表示/違反報告)
ゆーか - 最後、なにがあっても幸せな形で終わる、です!誤字りました、、すいません、、 (2019年11月17日 23時) (レス) id: db28430fd5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:むぎ | 作成日時:2019年1月19日 12時