064 好きなくせに ページ15
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山田「しんどいでしょ、ちょっと座ろっか。」
付き添ってくれた山田先生が、わたしに気をつかって座らせてくれる。エレベーターで1階まで降りて、外来の椅子に2人して腰掛けて。忙しいのに、申し訳ない。だけど、今は泣くことしかできない。
山田「……好きなくせにね。」
「、え?」
山田「お互いに。」
ふふふ、って綺麗な顔をくだけさせる山田先生は、わたしと彼をよく知っているから。素直になればいーのに、ってちょっと呆れながら笑う。
山田「もうお腹おっきいし。体も、ラクじゃないでしょ?」
「…まぁ、」
山田「あいつも、ほんとは思ってんだよ。Aちゃんのこと支えてあげなきゃ、って。けど何より素直じゃないからさ、うまくいかないのね。」
なんだか、山田先生と目を合わせるのも気まずい。あんなに言い合いした後だし。なんだこの夫婦、と思われててもおかしくない。
山田「ほんとに実家帰るの?」
「……うん。まぁ確かに、1回離れたほうが、冷静になれていいかなって。それに、」
いくつか、思ってることを山田先生に話した。わたしだって素直になれないこと、ほんとは誰よりも大切に思ってること、彼とこの先もずっと一緒にいたいこと。
うんうんと頷きながら優しく聞いてくれた先生に、また助けられる。ほんとは、ずっとずっと一緒にいたい。この子が生まれて、パパとママになって、幸せな家庭をつくりたい。こんなに愛されていること、わかってるはずなのに。彼の周りにチラつくたったひとつの影でさえ、わたしの心を蝕むの。信じてるのに。そんなわけないって思ってるのに。素直じゃない。わたしだけを見てよって、そんなこと言えない。
山田「ん、じゃあ気をつけてね。」
「…ありがとう、」
タクシーまで連れてってくれた山田先生。ヒラヒラと軽く手を振って、病棟へ戻っていく後ろ姿。背格好が似ているからか、どこか彼を思い出す。
ほら、こんなに好きなのに。馬鹿みたいだ。
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しゅあ(プロフ) - 初コメ失礼します!もうハッピーエンドで安心致しました。うるうるしながら最終的に号泣でお話読んでました!最後の救命メンバーからの一言には少しクスッとしてしまいました(笑)本当にこの作品作って下さりありがとうございました! (7月23日 0時) (レス) @page50 id: d9ff4faa7c (このIDを非表示/違反報告)
asumin110(プロフ) - 多分初めてコメントをすると思います!既に何回か読んでます!いつ読んでも感動しますし引き込まれます!山田先生も好きだったんじゃ…?って毎回思うのですがそこはもうそう思ってしまっていいのでしょうか(^ ^)?わら 続編書く気になりましたら楽しみにしています! (2022年5月22日 1時) (レス) @page50 id: 310d1e6e98 (このIDを非表示/違反報告)
う - 復帰するお話が見たい (2021年4月18日 2時) (レス) id: 5513b83dfa (このIDを非表示/違反報告)
知念菜々(プロフ) - 完結おめでとうございます!!続編で育休が明けて病院に復帰する話が見てみたいです! (2020年2月9日 16時) (レス) id: 70738b0893 (このIDを非表示/違反報告)
ゆーか - 最後、なにがあっても幸せな形で終わる、です!誤字りました、、すいません、、 (2019年11月17日 23時) (レス) id: db28430fd5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:むぎ | 作成日時:2019年1月19日 12時