06.〈金髪の男〉 ページ7
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小銭を入れ、釦を押すと、音を立てて飲み物が落ちて来る。
選んだのは乱歩さんお気に入りの炭酸飲料だ。
『はあ………』
今日何度目かの溜め息を吐き乍ら、しゃがんで取り出し口に手を突っ込む。
そして、冷たいその容器を掴んだ時だった。
「ほう、これが何処でも飲み物を手に入れられるという機械か」
『!』
すぐ後ろで声がして、びくっと肩を震わせた。
振り返ると、先刻までは居なかった背の高い男性が立って居た。
金髪に青い瞳、如何にもこの国の人ではない風貌だ。
脇に何故か鍋の詰まった袋を抱えたその人は、興味津々に今まさに私が手を突っ込んでいる自動販売機を眺めている。
「おお、済まないが君、この機械の使い方を教えてはくれないか?」
『え…?私ですか?』
そそくさと立ち去ろうとしていた所へかけられた言葉。
私は頰を引攣らせ乍ら振り向く。
金髪の男性は、「俺は使い方が判らないんだ」と欧米っぽく肩を上げた。
えっと……
こういう時は、人助けを積極的にするべき…かな。
『えっと…先ずは硬貨を此処から入れてください』
今時自動販売機の使い方を知らない人なんて居たのか、と思い乍ら硬貨投入口を指す。
矢っ張り私は困ってる人を無視できない性分らしい。
『…………』
男性が硬貨を探っている隙に、素早く横目で観察をし始める。
探偵業をする上で、人間観察は欠かせない。
最早職業病と呼んでも良い。
…かなりの高身長だ。
国木田さんと同じかそれよりも少し高いくらい。
端正な顔に合った綺麗なスーツは恐らくそれなりの値段がする上物。
泥ハネ一つ無い綺麗に磨かれた革靴も同じ。
…その抱えている鍋が気になる所だけど、
何処かの会社のそれなりの役職に就く人か、もしくは社長クラス。
何せ、自動販売機の使い方も知らないのだ。
きっと金持ちである事には間違いないだろう。
「oh……如何やらこの鍋を買った時に全て使い切ってしまったようだ」
『あー……それは残念でしたね』
「残念だ…是非使ってみたかったのだが……
そうだな、今度はこの業界に参入するか…?街の至る処にあるようだしこれは儲かるな」
判り易くしょんぼりしたと思ったら、今度は何やら恐ろしい事を云い始めた。
あ、やっぱ社長で間違い無いわ、と確信した。
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奏翔 - とても面白いです!更新待ってます!頑張ってください! (2023年3月21日 20時) (レス) @page50 id: 49dd49021f (このIDを非表示/違反報告)
ナナ - とても面白かったです!更新楽しみにしてます! (2023年3月17日 10時) (レス) id: e237c48342 (このIDを非表示/違反報告)
麦子(プロフ) - 瑠李さん» ありがとうございます!( ;ᵕ; ) これからもお付き合い頂けると嬉しいです! (2023年2月3日 7時) (レス) id: 064241d233 (このIDを非表示/違反報告)
瑠李(プロフ) - ゚+。:.゚おぉ(*゚O゚ *)ぉぉ゚.:。+゚めっちゃ楽しみに待っていました٩(๑>∀<๑)۶更新ありがとうございます<(_ _*)>麦子さんの小説は大好きです。頑張ってください。これからも応援してます。 (2023年1月19日 0時) (レス) @page48 id: 6b9c5dcab8 (このIDを非表示/違反報告)
麦子(プロフ) - Senaさん» コメントありがとうございます!とても嬉しいです…😭更新頑張ります! (2022年5月2日 1時) (レス) id: 064241d233 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:麦子 | 作成日時:2018年4月28日 20時