夢寐 Ⅲ (ページ30)

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「お待たせしましたー」

待っている間おしゃべりしていると
注文したものが運ばれてくる
先に来たゆーちゃんのを運んできたのは光成で
私を見て笑っていて“光成なに？と”言うと
ゆーちゃんから小さい声で“A来たよ”と呟かれる
何事かと思うとボソッとしたあの人の声

『お待たせしました。』

私の前に置かれるカヌレとコーヒー。
胸元についた名札を見ると
“Vasayegh“と小さく書かれた読み方がわからない謎の英語と
大きくカタカナで書かれた“ワタ”の文字

「ワタ、俺の友達のA。」

光成を気を利かせてワタくんに私を紹介してくれて
お互いペコリを挨拶する。
多分日本語を話せるんだろうけど、緊張して言葉が出てこないでいると

『それ…』

私が頼んだカヌレを指差すワタくん
そういえばさっき黒田くんがワタくんが提案したものと
言っていたことを思い出した。

「あ、これワタくんが考えたんですよね」

『そう。アポロ乗せると美味いって俺が言ったの。食べてみて』

ワタくんに勧められてフォークを持つと
生地の部分と上に乗ったアポロを一緒に口に運ぶ
アポロが口の熱で溶けて絶妙な美味しが甘さが口に広がった

「すごく美味しいです！」

感想を聞くとワタくんは私から視線を逸らして
“よかった“と呟く

もう少し話したいなと思ったけれど

「ごめん。行かないと。話せてよかった。楽しんでってね」

ワタくんが呼ばれて別の所へ行ってしまった。

お店から出るとゆーちゃんに
“A話せてよかったね！”と
なんだか嬉しそうに言ってくれたけど、
せっかく話せたワタくんと
もう会える機会なんてなかなかないよなと
気持ちが沈んでいくのを感じた。