夢寐 Ⅲ (ページ11)

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屋上で愛を叫ぶ＊KaK ページ11

“今夜登ってくるお月様は明日未明に満月を迎えます。
　6月の満月はストロベリームーンと言われ…”

テレビから流れてくる情報番組を聞き流し
唯一頭に残った“ストロベリームーン”の言葉を呟きながら
ワイシャツのボタンを下から上へと閉めていると

「ねー、皇輝くんまだ？」

ドアからひょこっと顔を出したAさんは
ネクタイを手に持ち俺が着替え終わるのを待っている

『待って、もうちょっと』

返事をすると“早く早く”と急かすように俺に近づいてくる
自分でやると言っているのに“私がやる”と譲らず
今はその言葉すら彼女には言わなくなった俺

それには訳があって
ネクタイを締めた後、少し背伸びをして
Aさんから俺にキスする

名残惜しそうに唇を離すと俺を見て
Aさんが幸せそうに笑ってくれるから
俺はこの時間がとても好きだ

そんな幸せな時間をそう長く続くわけもなく
時計を見ると俺はもう出ないといけない時間が迫っていて
蕩けた顔を両手で叩いてシャキッとさせると
鞄を持ってバタバタと玄関へと走る

おろし立ての革靴が硬くてなかなか履けないでいると
Aさんから靴べら手渡される

「ね、皇輝くん。今日何時に帰ってくる？」

『んー。今のところ18時には帰ってこれるかな。』

「そっかー私のが遅くなりそうだね。」

『俺のが先だろうからご飯作って待ってるよ。家近くなったら連絡して？』

靴べらをフックにかけドアノブに手をかけながら答えると
“あ、時間やばいよね。引き留めてごめん！皇輝くんいってらっしゃい”と
Aさんに促され会社へと向かった