【壁ドンしろ】*黒死牟[伍] ページ15
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……今更ながら泣けてくる。
何故こうも緊迫した状況で、「壁ドン」の説明をしなくちゃいけないんだ。
何故壁ドンされた後に殺されなくちゃならないんだ。
下を向き、みるみる内に溢れて来た涙が地面に零れ落ちて行く。
死にたくない。こんなところで死にたくない。
不意に、私の顔の横に、手が置かれた。
「………開いたな……」
頭上から、そんな声が降ってきた。
男特有の低音。嫌なくらい鼓膜が揺さぶられる。
扉が。
扉が、開いてしまった。
「………う、ううぅ……」
奴の刀が目に入った。
途端に、変な呻き声と共に涙がぼろぼろ溢れてきた。
死にたくない。
「ううう………」
「………、……」
情け無い面を晒す私を、奴は黙って見ていた。
何もせず、まるで傍観するかのように。
何故出ていかない。
……何故、私を殺さない?
その時。奴の手が伸びた。
「!!やっ……!」
思わず声を上げて、顔を逸らした。
目を固く瞑る。
間も無く襲い掛かるであろう衝撃にただ怯え、目を背ける。
奴の手が触れた。
私の目から絶え間なく流れる涙を、指でぐい、と拭った。
………………????
「……え、」
思わず素っ頓狂な声を上げた。
目を開けて、奴の顔を見つめる。
やはり黙ってこちらを見下ろしていた。
未だ流れる私の涙を、指の腹で拭いながら。
「………」
「………」
「………?」
「………」
…………いや、なんで?
「は……?」
予想もしてなかった出来事に、堰を切ったように流れ続けた涙が止まった。
そしたらそれを確認した目の前の奴は、私から指を離して背を向ける。
そして、そのまま歩いて行く。
「………ま、待って!!!」
呆然としていた私だったが、思わず制止の声を投げかける。
しかし奴は止まらない。そのまま開いた扉へと、真っ直ぐに歩いて行く。
「何で、何で殺さないの!!今も、この間も!!」
「……自刃願望が……有るのなら……応えてやっても良い」
「!」
「無いのなら……黙していろ……その方が、賢明だ……人間の娘よ……」
「………なんで、私を見逃すの……」
「………」
私の零した問いに、奴は応えなかった。
光の先へ、奴は消える。
ずるずると背を壁に擦らせながら、私は座り込んだ。
また涙が溢れてきた。
「………なんで、どうして、どうして」
私が零す問いに、応える者はいなかった。
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葵羽〜best friend group〜(プロフ) - カナヲちゃんが可愛すぎる件についてッッッ!ぱんこさんの○○部屋ホンッッットに大好きです! (2020年8月26日 16時) (レス) id: bccf6ec4c9 (このIDを非表示/違反報告)
秋花(プロフ) - リクエスト失礼します!不死川実弥さんでDキスなど強引&激甘が拝見したいです!お忙しい中大変恐縮ですがよろしくお願い致します! (2020年2月17日 2時) (レス) id: 543d736c91 (このIDを非表示/違反報告)
ちか - リクエスト失礼します 善逸の壁ドン、Dキス…善逸とのぎこちない感じがいいです。お忙しいと思いますがリクエスト聞いてもらえると嬉しいです (2020年1月21日 19時) (レス) id: 0b48e21538 (このIDを非表示/違反報告)
れい(プロフ) - リクエスト失礼します!!義勇さんで口移し…とか…甘めがいいです!!お忙しいでしょうがお願いします!!いつも楽しみにしています!!ありがとうございます! (2019年10月25日 22時) (レス) id: e4c2e9d2f5 (このIDを非表示/違反報告)
なしなつ - 炎柱わっしょい!!!!!!!(鼻血) (2019年10月15日 15時) (レス) id: 567b9ad697 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぱんこ | 作成日時:2019年9月8日 22時