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「あ!まってこれ!Aちゃんじゃん!」
やばい。
私より先に見つけてしまったらしい彼の声でヒヤッとする。
振り向くと“向井康二”の名前と、最近よくやるギャグをしてる本人の顔写真。もみあげ手裏剣!とか言って何かを飛ばしてるんだよな。あれ何なんだろう。
「この人?Aちゃんのお友達」
「あ、うん…そう」
展示されてる写真に目を向けると、私が模型を作っているところとか目黒くんがそれを見ていていて見上げながら私が何かを説明している様子とか。これは気づかないうちに学科棟で撮られてた写真か。
そのあとの2人で飲み物飲みながら談笑してる所もしりとりしてるとは本当に思えないほど自然で。康二くんのセンスは凄いんだなと改めて思う。
ただ私が歩いてる所とか、目黒くんが楽しそうに大学を見てるところとか。いつの間に撮ってたの?っていう写真が沢山で、でも自分で言うのもなんだけどなんか様になってて。思わず夢中で見てしまった。
「あ…」
目線を下に下げると【Special Thanks!】と書かれた表示。
その下に目黒くんが撮った康二くんと私が爆笑してる写真、そしてその後に私が撮ってあげた目黒くんと康二くんのキメキメショット。
そして、一番下には
いつものバイト先で、Tシャツに前掛けエプロンの3人の写真。そういえば、急にはい撮るでーって言われてとっさにピースしたっけ。
見慣れない私服姿の私たちの写真の下に、いつもの3人を飾る康二くんのセンス。何だかあったかい気持ちになって思わず顔が綻んでしまった。
康二くんの解説、聞きたいな。
彼のファインダー越しに見ているのはどんな世界なんだろうか。
「Aちゃんが笑ってるの、初めて見た」
「え?」
夢中で見ていて佐久間くんがいるのを正直忘れていた。
ハッとして横を向くと至近距離で目が合う。佐久間くんはいつものニコニコしてたり、わんこみたいにキョロキョロしている時の表情じゃなくて何だか切ないような、見たことない顔をしていた。
「…写真のAちゃんもだけど、今凄く可愛く笑ってた」
「いま…?」
「バイト先の友達なんだ、仲いいんだね」
「…うん」
仲がいい、そう言えるのは本当にこの2人だけだと思う。必要以上に人と絡まない私はバイトに行くことが友達と会う事なのかもしれない。そう考えるとやっぱり本当に陰キャだなぁと、もう1人の自分が呆れ笑った。
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作者名:ぽぷら | 作成日時:2021年5月20日 2時