陰キャとさくまの水曜日 (ページ20)

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「そうだ、お2人さん。ちょっとお願いあるんやけど」

店閉め後、3人で賄いを食べていると康二くんが急にそう話し出す。

「何、シフトは変わんないよ」

「違うわ、逆にこの間入ってあげたやろ。デートか？」

「まぁそんなところ」

「感謝せぇよ！自分のデートのためにシフト変わってくれる奴俺くらいしかおらへんからな！」

「んなの嘘に決まってんじゃん。急用、大学残ってたんだよ」

そんな2人の言い合いにほんと仲いいよなぁとぼんやり思う。何だかんだプライベートでもよく会うらしく、しょっちゅう遊びに行ってるんだとか。

「そんな話したいんちゃうねん。2人とも俺のモデルなってくれへん？」

「は？モデル？」

「そ、今度の撮影課題が人やねん。風景とかじゃなく人メインで撮らなあかんの。同じ学科のやつは被写体にできへんし、2人ともビジュアルええからオファーしようと思て」

そして話の本題はそんなこと。
私は自然と顔を顰めた。

「いや、だとしたら目黒くんだけでいいじゃん。こんなにスタイルいいんだから」

背も小さくてぱっとしない私がモデルになんかなったら康二くんの写真の評価が下がる気がしてならない。しかも何を撮るんだ、バイトしてる所？こんなTシャツに前掛けしてるダサい格好で？

不思議と目黒くんは様になって見えるんだけど、私はただのそこら辺にいるちんちくりんだ。

「スタイルとか関係ないで、ファッション誌やないんやから。笑」

「別にいいけどさ、どこで撮るの。まさかここ？」

「んなわけないやん。Aちゃんはいいとして、めめうちの大学来れるか？」

目黒くんの承諾で自然と話が進んでしまう。私が口を挟む間もなく話す康二くんは楽しそうだ。

「え、大学で撮るの？」

「うちの大学芸大やからって無駄にオシャレな作りしてるやろ？それに1人ずつでも撮るけど2人セットで撮りたいねん」

「ふーん、でも2人の大学楽しそうだしちょっと見てみたい」

「じゃあ決まりやな！予定見てまた連絡するわ！休み合わせなあかんしな」

いや、私の意見は…とんとん拍子で決まってしまった私たちの撮影会。

目黒くんは絵になるだろうなぁと思いながら賄い続きで少し丸くなった気がするほっぺを思わず引っ張る。

そういえば最近踊って無いもんな…
あの野郎私の水曜日を返せ。

今食べている賄いをお腹いっぱいだからあげるって康二くんに渡した。まだ全然食べれるけどあなたの課題の評価を下げたくないんだよ。