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「ね、俺と友達になろう」
「…はい?」
最後までその動画を見てから顔を上げた佐久間くんが放ったのはそんな一言と。思わず不機嫌度マックスな声をあげてしまう。
「Aちゃんと仲良くなりたい」
「いやなんで」
「仲良くなるのに理由いる?」
「いや…知らない」
相変わらず手首は捕まれたまま。離してくれないかなって思わずその手を見ると離したら逃げるじゃんって笑った。逃げるよ、そりゃ。
「阿部ちゃんにねー言われたんだよね。まず仲良くなりなって」
「え?」
「一緒に踊りたいの、だから仲良くなろ」
言っておくね。
その答え合わせが不意に行われた。
かなり余計なお世話な"言っておくね"だった。
「…一方的過ぎる」
「うん、だって一方的にでも言わないと仲良くなれないもん」
佐久間くんは私とは対照的にやっぱり笑っている。
私の表情が見えていない訳がないのに。
「分かるの。こういう人ってね、仲良くなりたかったら仲良くなろーってちゃんと言った方がいんだよね。俺もそうだったからね」
そして急に言われたこんなこと。
分かるようで分からないことを言われて首を傾げた。
「ね、LINE交換しよ」
「え、やだ」
「ですよねー、携帯貸して?」
「やだってば」
その言葉の意味を答える事はなく、やはり強引に話を進める佐久間くん。
「貸してくれるまで手離しませーん」
「は…?」
「今日もバイトなんでしょ?俺が手離さないと行けないよー」
あははっ!って笑うその顔に今日一番のイライラ。
ただこれを拒んでたら私じゃなく店に迷惑がかかる。
そう思った私は渋々携帯を差し出した。やっと手を離した佐久間くんは自分の携帯と私のをささっと操作し、ありがとーと携帯を私に返した。
“佐久間大介”
携帯に表示されたその名前をみて小さくため息をつく。
多分、プロフィール画像は踊ってる写真。
目線を上げてその本人を見るとまたニコニコ笑ってる。トプ画かわいいー犬飼ってんの?って。そうです、実家の犬ですが。
「俺も犬好きなんだよねー、ダックス飼ってんの!ムーンちゃんっていうんだぁ」
そう言って見せてきた写真は可愛いクリーム色のダックス。飼い主の髪色とそっくりだった。
「…バイト行く」
「あらー、またお話しようねー」
意外とあっさり解放してくれた佐久間くんに背を向けて体育館を出た。携帯に表示された名前を見てため息をつき、勢いよくその画面を消した。
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作者名:ぽぷら | 作成日時:2021年5月20日 2時