君の日記と冬の海

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「あ、ラウールくん」

「Aさん！お待たせしました〜！」

「わざわざこっちまでごめんね」

「いえいえ！どっちにしろ僕もこの辺まで来ようと思ってたんで！」


帰宅ラッシュの駅付近でキョロキョロするラウールくんは背が大きすぎて目立つのなんの。

木曜日。当たり前だけど制服姿のラウールくんといかにも高校生ではない私が並んでいるのを見て周りの人はどう思うのだろうか。弟？にしても顔が似てなさ過ぎる。


「何買うとか決めてるの？」

「んー、阿部ちゃんよく忘れ物したり物無くしたりするからキーケースとかいいかなぁって」

「え、そうなの？」

「お店の裏口の鍵とかよくどこいった？って探してるんですよ、自分の家の鍵も。だからまとめてしまっておけたりしたら便利かなと思って。」

「へぇ…意外」

「結構おっちょこちょいなんですよ？」


そんなところもあざといですよねーなんて笑ってるラウールくん。まぁ…すごくしっかりしてるイメージだったから意外だけどちょっと可愛らしいなとも思う。鍵を探して焦ってる彼を想像してみると顔が綻んだ。


「Aさんは？」

「それがさぁ、分かんなくて。何欲しいかな？」


仲良くさせてもらってるとはいえまだ出会って1ヶ月くらい。彼の好みなんかは分からなくて……


「うーん、一番はAさんが会いに行くことだと思いますけど」

「そういう気の使い方しなくていいよ。笑」

「いやほんとですって！阿部ちゃんAさんとお話しするようになって楽しそうですもん」

「あはは、そっか〜なら嬉しいね」


ラウールくん、いい子なんだよね。私がこんなに年下の子と話せるなんてのも珍しくて。ましてや高校生なんて知り合う機会もなかなかない。あどけなさもありつつ、話してると大人っぽいな〜ってこともあり。亮平くんが可愛がってるのも分かる。


「あの、真面目に言いますけどシンプルにお手紙とかどうですか？」

「え？」

「Aさんからのお手紙」

「手紙…？そんな、この歳なのに…笑」

「だからいいんですよ！まぁそのたくさんじゃなくても、1、2行でもいいんで何か手書きのもの添えたら絶対喜びます！物より気持ち勝負！」


何だか私より張り切ってるラウールくんがおかしくて笑ってしまうと「だから真面目ですからね！？」と訴える。ピュアだなぁ、なんて。


「気持ちかぁ」

「阿部ちゃんそう言うの好きなんで」

「そういうの？」

「ベタが好きなんですよ、あざといから」

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