君の日記と冬の海

勘違いだなんて ページ38

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「あ、Aさんこんばんは」


土曜日。コーヒー飲んで待ってようと思ってたけど何だか同期の3人以外とのご飯に緊張してしまって、服や髪の毛をどうしようかと悩んでいるうちにギリギリになってしまった。

18時の10分前にお店の前に着いた。するとそこにはエプロンを取った宮舘さんが入り口付近のお掃除をしていて、私に気づくと声をかけてくれた。


「こんばんは。もうお店閉めたんですか？」

「うん、ちょっと材料が切れて提供できないのが増えたから早めにね。阿部と待ち合わせでしょ？」

「あー、はい」


宮舘さんも把握済みか。何だか照れ臭い。


「中入ってていいよ。今阿部裏にいるからちょっと待っててね」


そう言ってcloseのプレートがかかったドアを開けてくれた。


「一応彼はここのオーナーだからさ。事務仕事もね？」

「あー、そうですよね。すごいなぁ」

「そんなオーナーのためにAさんに少しお願いがあるんだけど」


宮舘さんはちょっと声を小さくして私に近づく。何だろうと首を傾げる私に彼は笑った。


「ちょうど1週間後。阿部の誕生日なんだよ」

「あ、そうなんですか？」

「うん、営業後にラウールと僕でちょっとしたお祝いをしようと思ってて。それにAさんも来てくれないかなって」


そしてカウンターの横にかけてあるカレンダーをトントンと叩く。27日、土曜日。



「あー……」

「あら、都合悪かった？」

「うーん、まだ分からないんですけど…」



私は数日前に今日の佐久間の誘いを断って来週でいい？と言ってしまっていた。そこからLINEのやりとりはないものの、今から予定入ったとも言えないしなぁ……


「できれば調整してくれると嬉しいな。Aさんが来てくれたら絶対喜ぶから」


宮舘さんは優しく笑った。多分亮平くんと今一番仲が良くてお店のパートナーである宮舘さんは彼を純粋にお祝いしたいんだろう。


「んーと、ちょっと確認してみますね？」

「うん、ありがとう」


座って待っててと私をカウンターに促した宮舘さん。そしてあまり物だというクッキーやらお菓子をよかったら食べてって差し出してくれる。


「それも素敵だけど、ハーフアップだと綺麗なお顔がよく見えるよ」

「へっ！？」

「進学先、料理が服飾で迷っててね。結局料理にしたんだけど、ファッションに合う髪型なんかも少し勉強してたんだ。ちょっとしたアドバイス」

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