・ ページ17
・
阿部さんと一緒にベランダに出てきた私。日が出ていてまだ平気だけど本当にもう少ししたら寒くてこの席にはいられなくなりそう。
さっきサービスってとっくに空になったカフェラテのカップを片付けて新しくコーヒーを淹れてくれた。
こんなにもらっちゃって本当にいいのだろうか
「どうぞ」
「あ、ありがとうございます」
「営業中に店員がこんなにくつろいでるなんてあれなんですけどね。笑」
差し出してくれたブランケット。私がここに初めてきた時もこうやって気を利かせてくれた。あれからそんなに日は経ってないはずなのに何だかお客さんへの対応を裕に超えている。
「帰ってくるのきっと夜ですよね?多分もうかなり冷えますから気をつけてくださいね」
「そうですね、夜だとかなり」
「でも僕冬は好きなんですよね。寒いの苦手なのに」
「何でですか?」
「んー、冬生まれっていうのもあると思うんだけど…冬のこの海が好きなんですよね」
阿部さんはコーヒーのカップを両手で持ちながら話す。海を見つめる横顔が綺麗で、中世的な仕草も全然いやらしくないというか、似合うというか。海じゃなくて私は思わず阿部さんを見つめてしまっていた。
「海ってどうしても夏のイメージがあるじゃないですか。僕もそうだったんですけど、小さい頃ここに遊びにきて見た冬の海が何だか凄く広くて大きく感じたんです。海がこの空間を作り出してる雰囲気というか、何だか不思議な感覚になって。静かで波の音しか聞こえない海って夏だとなかなか無いし。観光地だから尚更」
冬の海か。
ここに戻ってくる前に最後に見た海の景色はその冬の海なはずだ。確かとても寒い日で、この町を出る本当に直前だった気がする。自分の荷物はもう片付いたからって、家族が作業してる中抜け出して。
「ふふ、そんなに見つめられたら恥ずかしいです」
「えっ、あ、ごめんなさい」
ぼーっと阿部さんを見つめながら昔のことを思い返していた。振り返った阿部さんと目が合って、思わず取り乱してしまう。
「考え事でもしてました?」
「えっと…まぁ、阿部さんのお話聞いて昔のことを思い出して」
「そっかぁ、もしかしたら僕ら子供の頃にどこかで会ってたりして。笑」
小さい町。大体が顔見知り。
そんな中で知らない子がいたらきっと分かる。
それに私は都会に出てしまった。
あの冬の日からはここを訪れてない。
阿部さんと会うこともできなかったはずだ。
999人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「SnowMan」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぽぷら(プロフ) - お風呂場の狸さん» いつもコメントありがとうございます!また泣かせちゃった…(笑)お楽しみいただけたようで嬉しいです。寒くなってきてお仕事だとか、朝起きるのも億劫な季節ですよね。お互いに頑張りましょうね( ; ; )こちらこそありがとうございます! (2021年12月19日 16時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
お風呂場の狸(プロフ) - めちゃめちゃ泣きながら読んでいま全てを踏まえて読み返してます……ほんとに天才です最高です……今日も6時半起きで仕事なのに一気読みしちゃいました……!今週一週間も頑張れそう(;-;)とても面白かったです!ありがとうごさいます!!! (2021年12月13日 2時) (レス) @page17 id: 0d3b8981e3 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぷら(プロフ) - aggyさん» お読みいただきありがとうございます!どうなるんですかねにやにや(笑)駆け足になりますが彼らを見届けてくださいね!コメントありがとうございます(^^) (2021年11月29日 1時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
aggy(プロフ) - コメント失礼致します!いつもお話拝見させて頂いてます。今回のお話、読んでてニヤニヤしちゃいます笑笑今後の展開楽しみにしてます! (2021年11月27日 20時) (レス) @page50 id: 4fbf4fb7f7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ぽぷら | 作成日時:2021年11月26日 11時