rain.09 ページ9
彼が下を向いている瞬間を
これまで私は何度見てきたのだろうか。
「じゃあこれで」と言った雨の日から
ほとんど日を開けずに
電車の中で座って本を読む彼を見つけた。
私から声は掛けなかったものの、
上からでも「この間の彼」だと分かった。
私は覚えているけど、彼はもう忘れているかもしれない。
そんなことを頭の片隅に置きながら
私はポケットの中からスマホを出して
今日の朝見られなかったニュースを見たりしていた。
A「え…っ」
電車が停車したと同時に流れる人と、留まる人。
いつものことだから、と気にせず
ニュースを見ていると突然、肩をポンポンと二回叩かれた。
叩かれた肩の方を向くと、
さっきまで私の目線より下にいたはずの彼が
私の隣に並んできていたのだ。
無一郎「この間の…覚えてます?」
A「あ、覚えてます…」
彼も覚えてくれていた。
それだけでまた、私の心臓はトクンと音を鳴らした。
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ゆっくり四つ葉 - 素晴らしい作品をありがとうございます!眼福です! (2020年9月2日 6時) (レス) id: 135b7cf6d1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:微力 | 作成日時:2020年6月15日 15時