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Side Ymmt
彼女にもう一度会いたい。嘘じゃなかった。
あの店に行くなら、もちろん美味しいコーヒーも飲みたいけれど、やっぱり彼女に会いたかった。
「…なんだか振られた気分」
「えぇ?」
そう言った彼女の顔は、まさに、きょとんって顔。何言ってるの、みたいな。そりゃそうだよね。ちょっとくらいどきってしてほしかった気もするけど、引かれなかっただけマシ?とも思ったり。
その日の夜は何となく眠れなくて、でも冷蔵庫の中にお酒もないし、明日もあまり早くないのもあってコンビニへと歩き出していた。その帰り、少しだけ回り道をしてあのお店の裏口を通る道へ行く。今日はお休みだった彼女、こんな時間までいてほしくないような、でも僕のワガママだけ言うなら会いたいような。どっちつかずな感情のまま、その場へ行くと、小さく噎せてる彼女がいた。
「…宮前さん?」
声をかけると彼女ははっと顔を上げた。その目が潤んでいるように見えるのは気のせい?
「大丈夫ですか、てかまだ仕事してたんですか」
「え、あ、まあ、そうですね」
「お疲れ様です。…ご一緒してもいいですか?」
やっぱり仕事してたんだ。いくらなんでもこの人も大概働きすぎじゃないか?自分の上司も働きすぎて体壊す寸前みたいな人がいるから、まるで人ごとじゃない。少しだけ彼女と話をしたくて、その口実にするために始めたそれをパーカーのポケットから取り出すと、彼女は驚いたように少し目を見開いて、そして場所を少し開けてくれた。
「…山本さん、吸うんですか?」
「んー、最近」
火を点けると、彼女ももう一本吸い始めた。
ふと視線を感じてそちらを見る。
「…ん?」
「あ、いや、似合いますね」
「ほんとですか、よかった」
似合うってことは、多少なりとも様になっているということだろうか。少しだけ鼓動が早いのはかっこつけてるのがばれているのが怖いから。でもね、せっかく手に入れたこんなチャンス無駄になんてしないよ。
「僕ね、宮前さんともっと仲良くなりたいんです」
ずっとずっと僕が思っていたことを伝えると、文字通り彼女はフリーズしていた。
「…そんな固まる?」
「あ、いや、え?」
「そのままの意味です。明日も早いですか?」
「いや、昼からで…」
「よかった、そしたら少し、お話しませんか」
彼女は不思議そうに、でもやがてふわりと微笑んで、ぜひ、と頷いてくれた。
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黄色い恐竜(プロフ) - 早瀬さん» コメントありがとうございます!私も書くことが自粛期間中の楽しみだったので、そう言っていただけて嬉しいです…!次回もよければぜひよろしくお願いいたします! (2020年6月15日 14時) (レス) id: f5683b3f6a (このIDを非表示/違反報告)
黄色い恐竜(プロフ) - ぺりさん» コメントありがとうございます!私も大好きな二人をそう言っていただけて嬉しいです…次回はまた雰囲気が変わるかと思いますが、よければぜひよろしくお願いします! (2020年6月15日 14時) (レス) id: f5683b3f6a (このIDを非表示/違反報告)
黄色い恐竜(プロフ) - 孤黒さん» コメントありがとうございます!日常的な幸せって素敵ですよね…そう言っていただけて本当にうれしいです!ぜひこれからもよろしくお願いします! (2020年6月15日 14時) (レス) id: f5683b3f6a (このIDを非表示/違反報告)
早瀬 - 完結おめでとうございます!コロナで外に出れない憂鬱なこの日々の楽しみがこのお話でした!とってもとっても素敵でした…!!山本さんを幸せにしてくれてありがとうございます笑これからも素敵な物語を楽しみにしています! (2020年6月14日 23時) (レス) id: 0963beb20e (このIDを非表示/違反報告)
ぺり(プロフ) - はじめまして!完結おめでとうございます!陰ながらずっと更新を楽しみにしておりました。山本さんが報われてよかったし、本当に好きな2人でした。次回も楽しみにしております! (2020年6月14日 22時) (レス) id: aef7fed343 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黄色い恐竜 | 作成日時:2020年5月21日 21時