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衝動的に走り出して、すぐにたどり着いた体育館。
そっと覗けば、そこには大好きな人の姿。
さっきまでみんなが練習していた空間で、
一人で静かにストレッチをしている。
足を数歩踏み出せば近づく距離。
声を出せば届く距離。
でも、いざここまで来たら言葉が見つからない。
自然と下がる目線。
そこに、大きな靴がふっと入り込んできた。
去年、光くんとお出かけした時に、
光くんが気に入って買っていた、
わたしが見つけた、白いバレーシューズ。
『…光くん』
「A!そんなとこでどうした?」
パッと弾けるような笑顔。
暗くて、少しじめじめした気持ちが、
一瞬にして吹き飛ぶような気がした。
胸があたたかくなる。
心が、気持ちが、満たされる。
〈 「A!嫌なことあったら、
いつでもすぐに俺んとこに来い!」
『…どうして?』
「俺が、絶対にAのこと笑顔にしてや る!」
『絶対に、?』
「おう!絶対だ!」 〉
あれはいつだったか。
出会ったばっかりの頃だっけ。
あの時、自信たっぷりに笑った光くんと
今、目の前にいる光くん。
やっぱり、何も変わらない。
ずっと、わたしのことを見てくれている。
大好きな光くんだ。
『…ううん!何でもない』
「うん?そう、か…。そうか??」
『うん。光くんが自主練してるかなって戻ってきちゃった!』
気がつけば、自分も笑顔になっていた。
口から出た声は、さっきまでを思い出せないくらいに明るい。
んー、と少し首を傾げた光くんだったけど
すぐに近くに落ちてたバレーボールをひょいと持ち上げた。
「何かよくわかんねーけど、バレー、やる?」
『バレー!やりたい!』
「お!いいじゃねーか!やろうぜ!」
『あ、でも、相手がわたしでいいの?』
「何言ってんだ、昔はよくやってたじゃん!」
トン、と優しい力で背中を押される。
自然な形で体育館に入ったわたしは、
そのまま光くんにつられて、練習終わりで張られたままのネットまで歩いていた。
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さな(プロフ) - ごんすけさん» 嬉しすぎますありがとうございます!励みになります✨ (2022年12月18日 19時) (レス) @page25 id: ee78dfa46a (このIDを非表示/違反報告)
ごんすけ(プロフ) - 大好きですありがとうございます(語彙力の消失) (2022年12月18日 16時) (レス) @page23 id: 62f4ed090e (このIDを非表示/違反報告)
さな(プロフ) - りるるさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます!今後も楽しんでいただけたら嬉しいです🧡 (2022年12月18日 15時) (レス) id: ee78dfa46a (このIDを非表示/違反報告)
りるる(プロフ) - 好きです‼︎💕 (2022年12月15日 16時) (レス) @page2 id: 6abbd94f19 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さな | 作成日時:2022年11月30日 21時