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「うん。お疲れ様」






タオル片手にたたずむ赤葦先輩は、
汗で少し濡れた髪の毛をそのままに
相変わらずの無表情だった。


その姿に、相手は部活終わりのスポーツマンだと思い出す。




慌てて立ち上がって、あいさつとともに頭を下げるも、うん、と短い返事が返ってくるだけ。



部室に向かうのかと思って待ってみるけど、
立ち去る様子もなくて何も言えなかった。





そのまま、気まずくもないけど何も生まれない
静かな時間が流れる。






「変なこと聞くけどさ」

『はい』

「Aさん、何か悩んでる?」

『…え?』

「何かあったの?」






どくん、と心臓が跳ねた気がした。

正面に立っている赤葦先輩の顔を改めて見ても、
その表情からは何も読み取れなかった。






『どうして、ですか?』






そう言うまでに何秒かかったのか。

すぐに言えた気もするし、
1分以上かけたような気もする。



自分の声が震えてるのがわかる。


赤葦先輩から、何て言葉が返ってくるのか
怖くて仕方なかった。






「今日、木兎さんといてもうわの空だったでしょ」

『そう、ですかね…』

「それに最近、校内で見かけた時も浮かない顔してたから」






俺の気のせいかもしれないんだけど、と付け加える先輩の顔は、もう見れなかった。




光くんに何回か呼ばれて気づかない、なんてこと、
今までなかった。

大好きなバレーを、集中して観られていないと
自分でも思っていた。




普段の生活だって、ここ最近は胸のモヤモヤが消えることはなかった。




自覚している。
原因だって、思い当たることがあるから。




つい、赤葦先輩から目をそらしてしまう。






「この前の音駒との練習試合、観に来てくれたよね」

『っ、!』

「あの日の、後半くらいからだよね。
休憩終わっても体育館いない時あったし、何かあった?」






自分の顔が歪む。



嫌な気持ちが。
モヤモヤしたものが。
正体不明の不安が。




抑えきれずに溢れてくる感覚。

もう、隠せないと思った。

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さな(プロフ) - ごんすけさん» 嬉しすぎますありがとうございます!励みになります✨ (2022年12月18日 19時) (レス) @page25 id: ee78dfa46a (このIDを非表示/違反報告)
ごんすけ(プロフ) - 大好きですありがとうございます(語彙力の消失) (2022年12月18日 16時) (レス) @page23 id: 62f4ed090e (このIDを非表示/違反報告)
さな(プロフ) - りるるさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます!今後も楽しんでいただけたら嬉しいです🧡 (2022年12月18日 15時) (レス) id: ee78dfa46a (このIDを非表示/違反報告)
りるる(プロフ) - 好きです‼︎💕 (2022年12月15日 16時) (レス) @page2 id: 6abbd94f19 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さな | 作成日時:2022年11月30日 21時

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