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「(……もう、会いたくなかったのに)」
12年ぶりの彼女は、相変わらず小さくて、肌が白くて、泣いていて、可愛らしい柔らかい声なのに口が悪くて。
抱きしめたくて、どうしようもなかった。
「ックソ…」
どうして、いつも上手くいかないんだ。
エマが生死を彷徨い、色んな抗争を経て東卍は解散し、みんながそれぞれの道を歩んだ。
何をどう足掻いても、忘れられらなくて、他の女を抱いてもさらに虚無感しか湧かなくて。
12年、あまりにも長かったこの日々。
ようやく、忘れかけたところだったのに。蓋をし始めたところだったのに。
“会いたい”そんな気持ちと、“会いたくなかった”そんな気持ちが混ざって混じって矛盾した自分に吐き気がする。
「A…」
12年ぶりに、彼女の名前を口に出したら、悲しいくらいに愛おしさが溢れ出す。
でも、今度こそ何かあったら壊れる。
“Aの両親、死んじまったらしい”
いつになく心が騒ついて、アイツと再会したのはやっぱり間違いだったんだと気持ちに蹴りをつける。
「マイキー?どこ行くの?」
「三ツ谷のとこ」
「もう、ちゃんと道場行かなきゃおじいちゃんに怒られるよ」
そんなエマの声も無視して俺は家を出た。
.
「お、こんな時間に珍しいなマイキー」
「ん」
三ツ谷のアトリエに入り浸ることは多かった。
「スペアキー作っちまった」、そう言って眉毛を下げながら笑って俺にアトリエの鍵をくれた。
だから、三ツ谷がいなくてもここで一人で過ごすことが多かった。
「ドラケンから聞いたぜ。Aこっちいたんだってな」
「…ん」
「会ったんだろ?」
「別に」
「はぁ?ったく…」
赤、青、黄、緑、白。
色んな布と作業道具も散りばめられて、正に作業場という感じの場所。
そして、その一番ど真ん中に置かれたのは真っ白なドレス。
それは、ヒナちゃんが着る予定のドレス。
「A、さぞかし綺麗になってんだろうな」
確かに、可愛いよりは綺麗な風貌になっていた。
「俺も会いてぇな」
三ツ谷は一人で言葉を続ける。
そんな三ツ谷の言葉を全て無視し、俺は晴天が広がる窓の外を見上げた。
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2021年、ありがとうございました!
良いお年を〜♡
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水原カノ(プロフ) - くろしばさん» 嬉しい限りです( ; ; )拙い文章ですが、番外編でもよろしくお願いします…!(*´꒳`*) (2022年2月9日 23時) (レス) id: e0da8650d9 (このIDを非表示/違反報告)
水原カノ(プロフ) - みきさん» そう言っていただけて嬉しいです…!まだ続きますがよろしくお願いします(*´-`) (2022年2月9日 23時) (レス) id: e0da8650d9 (このIDを非表示/違反報告)
くろしば(プロフ) - いつも楽しくワクドキ泣きもしながら読ませていただきました!番外編楽しみにしています!応援してます!頑張ってください! (2022年1月22日 22時) (レス) @page50 id: ba268ba5be (このIDを非表示/違反報告)
みき(プロフ) - 番外編楽しみにしてます!この作品めちゃ面白かったです!頑張ってください! (2022年1月22日 16時) (レス) @page50 id: 23779c598a (このIDを非表示/違反報告)
水原カノ(プロフ) - 茶子さん» 素敵なコメントありがとうございます(;_;) ティッシュの供給は間に合っていますでしょうか…?いつでもプレゼントします!(*´ω`*) (2022年1月15日 22時) (レス) id: e0da8650d9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:水原カノ | 作成日時:2021年12月23日 17時