［完］もう二度と会いたくなかった【佐野万次郎】

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ーside 真一郎ー



『しんいちろー』


「お、Aまた来たのか」


『まんじろーが秘密事するから』


「隠し事な」



3歳でも、小学生でも、中学生になっても、Aは特に変わらなかった。

ちっこくて、可愛くて、面倒見たくなる。万次郎とも相変わらず口喧嘩はするものの、仲が良いのは健在だ。

Aと一緒にいる時間は、いつの間にか10年も経っていた。最近は、俺の店にも毎日のように来てはこうやって万次郎の愚痴を言っている。



「お前らはいつになったら仲良くなるんだよ？」


『一生来ない』


「はいはい」


『…しんいちろーとなら、もっと仲良くなりたい』


「はは、中学生はませてんなあ」


『ほんとだよ？』



Aはどうやら俺のことをそういう対象で見ているらしい。

それを知ったのはAが中学生になってすぐ。「私、しんいちろーとね、恋人になりたいの」って突然言われたのがきっかけ。

まあ、もちろん中学生に手なんて出せないからいつも流してるけど。



『しんいちろー、お腹すいた』


「はあ？腹減ったってなんも…あ、確かアイツらがなんか買って来てたな…」



Aは俺が真面目に作業しててもマイペースな行動しかしない。

後ろから抱きついてきて一秒も離れようとしない。終いにはさっきのセリフ。



『なになに、お菓子？』


「んや、ケーキ」


『ケーキ！？食べたい！』



アイツら暗黙の了解だかなんだか知らないが、Aをめちゃくちゃ可愛がっててこうして何かと置いていっている。

店の休憩所にある小さい冷蔵庫を開けると、案の定ケーキが2つ入っていた。



『チョコケーキ！』


「だろうな」


『やった〜！』


「次会った時礼言っとけよ」


『うん！』



俺も休憩がてら、一緒にケーキを食べた。



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