50話 ページ3
弾き終わると、先生は拍手をしてくれた。
「……お前が弾くと別の曲みたいだな」
私が首を傾げると、彼は続ける。
「生徒が巫山戯て弾いているのは何度も聴いたことがあるが、もっと平坦だった」
「ありがとうございます」
それは十分すぎるほどの褒め言葉だった。
私は鍵盤にカバーを掛けて、ピアノの蓋を閉める。
「そう言えば、先生は何でここにいるんですか」
「日直だからだ」
鍵の束を見せて、先生が言う。
そうして彼はさりげなく続けた。
「お前こそ、心愛が気にしてたぞ」
喧嘩か?と聞かれ、私は首を振る。
喧嘩というのは対等な立場でするものだ。
「私の一方的な攻撃ですよ」
あの傷ついた顔を見た時、胸の奥が冷えた。
「そうか。……でも人は全く理由無しに他の人を攻撃することはないだろ」
「……少なくとも心愛に理由はありませんでしたし、理由があるにしても言っていいことと悪いことがあります」
先生は優しく笑った。
ドキリとする。
なんだかその表情の奥に寂しさがあるような気がする。
私は慌てて続けた。
「へへ、私もう子供じゃありませんからね!!」
彼はすぐに呆れた顔になった。
「大人でもないけどな」
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みゆ - 忘れた頃に戻ってきます。の言葉を待ち続けてました!最高です🥲素敵な作品でいつも読ませてもらってます。これからも応援してます! (2022年8月12日 21時) (レス) @page31 id: df78362649 (このIDを非表示/違反報告)
Niko(プロフ) - 3年ほど前から主さんの作品が好きで、久しぶりに開いたら更新されててびっくりしました...!ずっと応援してます! (2022年6月19日 18時) (レス) id: bff3de95f7 (このIDを非表示/違反報告)
ステラ(プロフ) - 最高すぎます!!!一気読みしちゃいました笑 (2022年6月5日 22時) (レス) @page30 id: c6594e1224 (このIDを非表示/違反報告)
まなぶ - やばい....最高です....絶賛今自分先生に恋してる身なので、気持ちがわかりすぎてえぐいです....続きがすごくみたいです!更新待ってます!! (2022年4月10日 23時) (レス) id: be5b892ffb (このIDを非表示/違反報告)
ハルキ - っっっ〜〜!最高っです!久々の更新が嬉しすぎて「えっ!」って言っちゃいました!これからも応援してます! (2022年4月4日 23時) (レス) @page30 id: 26f7606c1b (このIDを非表示/違反報告)
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