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49話 ページ2
夕陽が窓から差し込んでくる。
音楽室は4階だから、そこから眺める景色は綺麗だったけど、少し眩しい。
カーテンを閉めて、またピアノを弾く。
ミスタッチは気にせずに、感情を込める。
一曲弾き終わり、ため息をつく。
そろそろ帰る時間か。
ふと顔を上げて、私は初めて入口に誰かが立っているのを見つけた。
「……深淵、先生」
そういえば部活もサボってたんだった。
怒られるかなーと思いながら先生を見る。
先生は黙って私のそばまで来て、口を開いた。
その口から出たのは予想していたような言葉ではなかった。
「何の曲だ?」
私はやや拍子抜けしながら答える。
「『悲愴』の第一楽章です」
先生は笑った。
「ぴったりな曲名だな」
「はい」
私は先生を見上げる。
「何かリクエストがあれば練習してきましょうか?」
彼は残念そうに鍵盤に手を触れ、呟いた。
「音楽には疎いから、猫踏んじゃったくらいしか知らない」
「それならすぐ弾けますよ」
「じゃあ弾いて」
私は鍵盤に指を置き、軽快に、メロディーを奏でる。
歌詞をよくよく考えると楽しいどころではないが、メロディーだけなら愉快な曲だ。
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