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シンプルに、ただただ顔が良い。
開けたシャツの襟元から覗く胸筋も、首筋も、何もかも艶やかで。
「A…」
ようやく直視出来るようになったAの顔を、するすると指で撫でる。
眉目秀麗なバランスの良い顔が、本当に好きだ。
囚われる感覚、この見た人を掴んで離さないこの魅力が、更にAへの感情を深く突き落とす。
平面だから、誰の邪魔なくこんな近くで顔を見て、触れて、味わえる。
さっきから高鳴る鼓動が、心地いい気さえしている。
酷く興奮する、この時間が。一人でAを堪能するこの時が、生きていて一番素直に欲が吐ける場。
もう既に下腹部は限界を迎えそうで、出しても出してもなくならないこの欲と感情がある意味幸せな悩みだった。
Aの唇に自分の唇を重ねる。本当はやってはいけないことなのに、ただの紙なのに、深く深く快楽が爆発する。
見てるだけで吐き出せるのに、今日は気持ちが高揚して自分が抑えられそうにない。
動く手が、止まっては動いてを繰り返す。
「A、好き…」
好きすぎて涙が出る、なんてファンの言葉は過剰表現だと思ってたけど。
あれは嘘じゃないんだと感じる。
生理的な涙が、液体が、買ったばかりの雑誌を濡らす。
「あんたになら遊ばれたっていい。俺のこと、いっそ壊してくれればええのに」
漏れる声は誰にも届くことなく無機質な壁に吸収される。
立ち上がろうとすると抜けた足腰のせいでフラつく。ああ、これもAのせい。
力の抜けた手で雑誌を掻き抱いて、ベッドに倒れ込む。
「会いたい」
こうやって感情が落ち着いて、賢者的時間になるたびに会いたいなって思う。
机に置いてあるAと同じ香水を手探りで手に取り何度かプッシュする。
いい匂い。Aと同じ香り。でも、やっぱりA固有のあの匂いには到達しなくて。
息を吸って目を閉じる。夢で会えたら、好きの練習をして。
次会った時は、今度こそ告白して、素直になって。
……そんなことしなくとも俺のものになってくれればいいのに。
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