No.35 ページ35
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｢あ、あの、｣
逃げていく男を呆然と眺めていたら、耳郎よりも早く状況に順応した梅雨が、目の前に立っている少女に声をかけた。
男を見送っていた少女は梅雨の声にゆっくりと振り返った。
目に見えない速さで男を地面につかせた少女は、細い手足がよく映える白のキャミソールワンピースに水色のカーディガンを羽織って、可愛らしい麦わら帽子を被っていた。
胸元まである艶々とした黒髪が、さらさらと揺れる。
それら全てが気にならなくなってしまうのは、吸い込まれる様な美しい瞳のせいだろうか。
少女の瞳は、惹き込まれる様な青色だった。
最も燃焼温度の高い恒星は、青白く光っているのだという。
生まれてから死ぬまで煌々と輝き続ける星々の様に、世界のあらゆる色彩を反射して、少女の瞳は煌めていた。
｢怪我、大丈夫ですか｣
少女は梅雨の方を一瞥してから、耳郎の男に掴まれた手首を指さした。耳郎はハッとした。今の今まで男への対処にほとほと困っていたというのに、すっかり忘れてしまっていたのだ。
見れば、手首が赤く腫れてしまっている。軽い打撲だ。
｢冷水か、コンビニで氷でも買って冷やした方がいいですよ｣
少女は何も無かったかのように淡々と話す。
少女の言っている事はよく分かる。分かるのだが、拭いきれない違和感に耳郎と梅雨じゃ顔を見合わせた。
｢えっと、君は小学生、だよね？ここら辺の子なの？｣
意を決して耳郎が話しかけると、少女はことりと首を傾げた。その首が今にも折れそうなほど細くて、内心ひやりとした。
｢小学生？｣
まるっきり何を言っているのだろうと言いたげな声に、大真面目に頷いた。
｢うん｣
｢･･････あー、うん。ここからはちょっと遠いけど、近くの町に住んでるよ｣
何故かぎこちなく頷いた少女に、再び梅雨と目を合わせた。
自分達が言えた事ではないが、オールマイトが神野での戦いを終えた後、全国では一時的に犯罪件数が増加している。テレビでも連日連夜外出自粛を呼びかけているし、特に小さな子供がいる家庭では徹底しているはずだ。
｢お母さんとは一緒に来たのかしら？｣
今度は梅雨が身を乗り出した。こうしてみると梅雨とはあまり身長が変わらないが、成長期特有のほっそりとした体(それにしても細すぎるが)は、やはり小学生らしかった。
｢･･････ううん。ちょっと家出中なの｣
少女は目を逸らして首を振った。
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リサ(プロフ) - とても面白いです。続き楽しみにしてます！ (2021年12月7日 20時) (
レス) @page14 id: 942b3344d9 (このIDを非表示/違反報告)
猫(プロフ) - 面白いです！続き待ってます！！ (2021年12月7日 11時) (レス) id: 159bb94574 (このIDを非表示/違反報告)
クレア - 文が多いのにスラスラ読めて楽しい小説ですね、ここ(占ツク)に少ない雰囲気の作品なので、ちょっとラッキーな気分です(笑)！こういうの、私は好みですよ。 (2021年12月7日 9時) (レス) @page4 id: 730c5fdade (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：エリンギ(サブ垢) | 作成日時：2021年12月6日 18時
