No.12 ページ12
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｢生きてたか｣
義爛がそう言うと、粉塵で汚れきった痩せっぽちな少女が、不機嫌を隠そうともせずカウンターの席に座った。
こういうところは、まだまだ子供なんだなあと、反則級の腕前を持つアサシンを前に、義爛はしみじみ思う。
｢ごめん｣
一言呟いて、少女は項垂れた。
｢死穢八斎會の罠に引っ掛かった｣
｢･･････遅かれ早かれ、そうなる事ァ分かってたさ｣
最近危ない噂の絶えない死穢八斎會には絶対に近付くなとこの少女に忠告していたのは義爛だが、彼女の謝罪はきっと、死穢八斎會に接触してしまった事ではなく、それによって義爛に迷惑がかかるかもしれない危惧に対してだ。
｢元より俺たちは契約上の関係さ。気楽に行こうや｣
｢･･････別に、義爛に何かあったら困るのは私だから言っただけだし｣
素直じゃない。けど、心根は真っ直ぐで優しい子供だ。
ヴィラン向きじゃない。常々義爛はそう思っていた。
｢それにしても、昨日の今日で帰ってきたが、夜行バスでも使ったのか？｣
少女は義爛の問いにゲンナリと顔を顰めた。
どうやら違うらしい。
｢夜行バスで帰ろうと思ってたんだけどさあ、危ないかなって思って帰りの交通費分を梅田駅のロッカーに置いてきちまった｣
｢･･････つまり？｣
｢こんな格好じゃ行くに行けなくて、飛んで帰ってきた｣
義爛は爆笑した。
凡そ十数年ぶりに見られる大爆笑だ。
｢笑わなくてもいいじゃん！疲れたな、夜行バスで眠って、朝からこのバーで寛いで義爛が来るの待とうかな、って思ってたのに飛んで帰らなきゃいけなくなった私の気持ち、分かる！？｣
｢ははははは！！はは、はっは、げほっ、ぅ、ははは！！｣
｢クソッ。咳き込んで喉潰しちまえ！｣
少しずつ落ち着いてきて、じんわり、しかし確実に少女の言った事の異常性が垣間見えてきた。
｢大阪から東京まで600kmはあるが、徹夜で飛んで帰ってきたのか｣
｢そうだよ！しかも、夜間パトロール中のヒーローに見つからないように高度4000くらいでずっと飛んできたんだからね。お陰で高山病になったよ｣
元気に叫んでいるガキにピンピンしてんじゃねえかと突っ込めば、頭が痛いと返ってきた。
何とも呑気な奴だ。
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リサ(プロフ) - とても面白いです。続き楽しみにしてます！ (2021年12月7日 20時) (
レス) @page14 id: 942b3344d9 (このIDを非表示/違反報告)
猫(プロフ) - 面白いです！続き待ってます！！ (2021年12月7日 11時) (レス) id: 159bb94574 (このIDを非表示/違反報告)
クレア - 文が多いのにスラスラ読めて楽しい小説ですね、ここ(占ツク)に少ない雰囲気の作品なので、ちょっとラッキーな気分です(笑)！こういうの、私は好みですよ。 (2021年12月7日 9時) (レス) @page4 id: 730c5fdade (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：エリンギ(サブ垢) | 作成日時：2021年12月6日 18時
