No.1 ページ1
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薄汚い排煙が、工場に溢れた街の空をもうもうと立ち込めている。
Aはそれをボーッと眺めて、それからふと眼下の路地裏を見下ろした。十二階建てビルの屋上が思いの外見晴らしがいい事は、昨日の下見で知っていたが、こうもターゲットが見えやすい仕事というのも中々ない。
路地裏では、アタッシュケースを持ったスーツ姿の男と如何にも堅気でない様子の刈り上げた男が言い争っていた。アタッシュケースの中身は最近界隈を騒がせている違法ドラッグだったか。Aには至極どうでもいい情報だった。
今回の依頼対象はスーツ姿の男。仕立てのいいスーツをぴっちりと着こなしてはいるが、あれでも超一級の巨悪ヴィランらしい。恐らく葬ってきた人間の数は両手足の指では収まりきるまい。
銃は持ってきていない。今回の相手は、死体を回収しないで警察に横流すといっていた。ならば少しでも足が着く様なマネは避けたかった。それに、Aの本領が発揮されるのはスナイプの技術ではないのだから丁度いい。
ああ、また殺してしまうのか。
ツキリと胸の辺りが傷んだ気がした。気のせいだと言い聞かせて、今まで生きてきた。これは自分で選んだ道であると。
アタッシュケースを持った男が、とうとう相手の狷介固陋な様子に痺れをきらしたのか、個性を発動した。途端に身体の大きさが増幅し、スーツの美しい布がビリビリと破れ、彼の足元にまるで水溜まりのように落ちていく。
そろそろ頃合だ。
｢悪く思うなら、この世界に身をやつした自分を恨むんだね｣
誰に言うでもなくそう呟いた少女は、薄汚い空を一瞥した後、トンと爪先で地面を蹴り、次の瞬間、屋上から姿を消していた。
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リサ(プロフ) - とても面白いです。続き楽しみにしてます！ (2021年12月7日 20時) (
レス) @page14 id: 942b3344d9 (このIDを非表示/違反報告)
猫(プロフ) - 面白いです！続き待ってます！！ (2021年12月7日 11時) (レス) id: 159bb94574 (このIDを非表示/違反報告)
クレア - 文が多いのにスラスラ読めて楽しい小説ですね、ここ(占ツク)に少ない雰囲気の作品なので、ちょっとラッキーな気分です(笑)！こういうの、私は好みですよ。 (2021年12月7日 9時) (レス) @page4 id: 730c5fdade (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：エリンギ(サブ垢) | 作成日時：2021年12月6日 18時
