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そうして少し経つと、「それで話の続きなんだけど」と笑いのおさまったらしい左近が、話を戻す。
「確かに白谷先輩は、ぼくが困ってる時いつも最初に気づいてくれてた」
「やっぱり……」
「それでぼくも、それがどうしてか分からなくてモヤモヤした時期があったんだ」
左近が、何かを思い返すように目を細めた。 そうしてから、眉尻を下げて笑む。 「結局、自分じゃ答えは出なかったんだけど」そうして、続けた。
「でも、竹谷先輩が教えてくださったんだ。 白谷先輩は、ぼく達のことをすごく大切に思ってくれていて、それだけだと他の先輩方と同じなんだけど、白谷先輩はね、人の瞳の色をよく覚えているんだって。 だから、それで普段と悩んでいる時を区別してるのかもしれない、って竹谷先輩は仰ってた」
考えながらも左近はそう告げた。
その言葉に、ぼくは何となく、ストンと胸に落ち着くものがあって。 瞳でどう判断しているのかなんてさっぱり分かりやしないのに、確かに、と思ってしまった。
ぼくに悩みはないかと尋ねてくる時、白谷先輩は屈んでぼくの瞳をじっと覗き込んでくる。
「それに白谷先輩は、何か、人から負の感情を吐き出させて処理するのが、すごく上手なんだって。 竹谷先輩が下級生の頃は、今よりも無神経だったって聞いたけど、後輩が増えて、変わられたんだって仰ってたよ」
「……そうなんだ」
いつの間にか、ぼくだけでなく、三郎次と久作も左近の話に聞き入っていた。
左近は一年生の頃を思い出しているのか、柔らかい笑顔を浮かべていた。
「白谷先輩って無愛想に見えるけど、おれ達のこと気にしてくれてるんだな」
「そうだよ、久作」
「でもなんで、四郎兵衛には聞くのに、ぼく達には聞かないんだろう」
「三郎次、嫉妬?」
「ちっ、違う!」
久作が揶揄うように笑う。 それに三郎次は声を張り上げて、違う違うと訂正していた。
多分だけど、とそれを無視して左近はぼくに言う。
「四郎兵衛はほら、控えめだから。 それに委員会の先輩が、ほら…… ええと、あんなに個性的じゃあ、あんまり気にしてもらえないんじゃないか? だからきっと、白谷先輩が代わりに四郎兵衛の事を気にかけてるんだと思うよ」
(七松先輩という暴君がいるしな……)
(左近言葉選んだな……)
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作者名:星月夜 | 作成日時:2019年2月3日 19時