幻の虎戦士。 (ページ47)

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打てとは言ってない。ページ47

Aside

誤魔化し続けた、オールスターについてきた理由。

監督の悪ふざけにより、打席に立っています。

久しぶりに見るこの景色、心地良い緊張感、

野球が大好きなんだって、気づかせられる。

耳に馴染んだ応援歌すらも、今は懐かしい。

この夢よ打球に乗って
はるか彼方へ
打てあの星に届く
ホームラン

星に届くホームラン――私が何回も聞いた曲も、同じ事を言ってた。

１球目、ファール。芯に上手く当たらず飛ばなかった。

２球目、ギリギリのボール球を見極められず振ってしまいストライク。

２球でツーストライクと追い込まれてる。でもいつも感じる焦りはなかった。

『次、決めれば良いんだ。』

そう思って、気持ちを楽にして、

目線を一点に集中させた。

無意識に、その場所をバットの先端で指していた。

どよめく客席、ざわめくベンチ。

インコースに来た豪速球をしっかりと見据え、

現役と同じようなフルスイングで、打った。

打った瞬間にわかった。入った、入っちゃった。

一瞬しんとなって、遅れて歓声が上がった。

ゆっくりとダイヤモンドを走り、力強くホームベースを踏んだ。

その先に待っていたのは、チームメートの笑顔と、

山田「凉、お前なあ…普通あそこで打つか？」

金本「出ろとは言うたけど打てとは言ってないぞ！(笑)」

菊池「空気読めよ(笑)引退してから打ってどうすんの(笑)」

恒例の手荒い祝福。

やっぱり私、野球ができて幸せだ。

『すみません！入っちゃいました！(笑)』